金原ひとみさんの最新長編小説『YABUNONAKA―ヤブノナカ―』は、2025年4月10日に文藝春秋から刊行された作品です。文庫版はまだ発売されていませんが、単行本は約528ページのボリュームで、電子書籍も利用可能です。タイトルは芥川龍之介の短編『藪の中』を思わせるもので、複数の視点から語られる人間模様を描く群像劇の構造が特徴です。連載当初から注目を集め、刊行後も高い評価を受けています。
この小説は、MeToo運動の影響下で急変する現代社会を背景に、性加害の告発をきっかけとした人間関係の連鎖を描きます。文芸業界を舞台に、SNSやマッチングアプリなどのデジタルツールがもたらす混乱、対立、孤立を多角的に探求。被害者、加害者、周囲の人々の「わかりあえなさ」を丁寧に浮かび上がらせ、読者に「変わりゆく世界を共にサバイブしよう」と問いかけます。
物語は8人の視点から淡々と語られ、それぞれの主張や内面が交錯。性、暴力、権力、家族、愛といったテーマを、俯瞰的な視線で書き尽くした点が評価されています。原稿用紙約1,000枚の力作で、SNSのようなねじれた空洞感を表現した革新的なスタイルが魅力です。
金原さんはクロワッサンオンラインのインタビューで、「小説はもっとも誠実に向き合える世界」と語り、作品を通じて「性加害の告発が開けたパンドラの箱」の中で、人々がもがく姿を描きたかったと述べています。読者に「あなたは誰が正しいと思う?」と投げかける姿勢が、作品の核心です。
この作品は、現代の社会問題を深く掘り下げつつ、普遍的な人間の葛藤に触れる一冊。興味をお持ちの方は、書店やオンラインでぜひ手にとってみてください。詳細は文藝春秋の公式サイト(books.bunshun.jp)で確認できます。