韓国レーダー照射事件の詳細
事件の概要
韓国レーダー照射事件(正式名称:韓国海軍レーダー照射問題)は、2018年12月20日15時頃、石川県能登半島沖の日本海(公海)で発生した軍事摩擦事案です。韓国海軍のイージス駆逐艦「広開土大王(クァンゲト・デワン、DDH-971)」が、海上自衛隊のP-1哨戒機に対して火器管制レーダー(射撃管制用レーダー)を約40秒間照射したとされるものです。このレーダーは、ミサイルや主砲の照準を定めるためのもので、照射は「ロックオン」状態に相当し、相手機を標的化する危険行為とみなされます。
日本側は哨戒機が北朝鮮漁船の救助活動を監視中だったのに対し、韓国側は「自衛隊機が低空で威嚇接近したため、通常の識別レーダーを使った」と主張。両国で激しい外交論争を引き起こしました。 自衛隊機や乗員に被害はなく、偶発的衝突は回避されましたが、国際軍事ルール(CUES:海上遭遇時の行動基準)違反の疑いが指摘されています。
事件の経緯(時系列)
- 2018年12月20日(発生日):
韓国海洋警察庁と韓国海軍が、北朝鮮漁船の遭難救助を実施中、海上自衛隊のP-1哨戒機(第4航空群所属、厚木基地)が上空から監視飛行。韓国駆逐艦から火器管制レーダーが照射され、日本側が即座に回避行動を取る。照射時間は約40秒で、距離は約500m程度と推定。 - 2018年12月21日:日本政府が韓国側に外交ルートで抗議。韓国国防省は「照射はなかった」と完全否定。
- 2018年12月28日:防衛省が動画証拠(P-1機内から撮影したレーダー波形記録)を公開し、火器管制レーダーの照射を証明。韓国側は「通常の捜索レーダー(識別用)」と反論。
- 2019年1月21日:防衛省が最終見解を公表。「火器管制レーダーによる照射は明らかで、航空安全を脅かす危険行為」と認定。再発防止を強く要求。
技術的・軍事的意味
- レーダーの種類:照射されたのは「火器管制レーダー」で、単なる捜索用ではなく、ミサイル発射直前のロックオン用。国際基準では、こうした照射は「敵対的行為」に近く、誤射や衝突のリスクを高めます。P-1機は高度約150mの低空飛行中だったため、韓国艦のミサイル(ハープーン等)が即時対応可能だった点が問題視されました。
- 背景:事件当時、日韓関係は徴用工判決やGSOMIA(日米韓軍事情報共有協定)破棄問題で悪化中。韓国側は北朝鮮漁船救助を「人道的活動」と位置づけ、日本側の監視を「干渉」と見なした可能性が高いです。
両国側の主張と反応
| 項目 | 日本側の主張 | 韓国側の主張 |
|---|
| レーダー種類 | 火器管制レーダー(ロックオン用)。動画・波形記録で証明。 | 通常の捜索レーダー(識別用)。火器管制レーダーは使用せず。 |
| 意図 | 韓国側が日本機を威嚇・標的化。国際ルール違反で危険行為。 | 日本機が低空接近(約150m)で威嚇飛行。韓国艦の自衛的措置。 |
| 対応 | 外交抗議、証拠公開、再発防止要求。最終見解で認定。 | 完全否定。調査結果で「照射なし」と発表。謝罪拒否。 |
| 影響認識 | 日韓信頼関係の損ない、偶発衝突のリスク増大。 | 日本側の「プロパガンダ」。北朝鮮関連の救助活動への干渉を非難。 |
- 日本政府:安倍晋三首相(当時)が国会で「極めて遺憾」と述べ、動画公開で国際世論を味方につけました。
- 韓国政府:文在寅政権下で「隠蔽指示」の新証言(2024年報道)があり、北朝鮮との関係(金正恩暗殺工作関連?)が背景との指摘も。 国防省は一貫して否定を続け、尹錫悦政権でも事実認定を避けています。
その後の影響
- 短期(2019年):日韓首脳会談で議題化されず、GSOMIA破棄騒動に波及。韓国側が再発防止訓練を実施したものの、合意に至らず。
- 長期(2020年以降):2023年6月、日韓防衛相会談で尹政権が「再発防止合意」に至り、関係改善の象徴に。 しかし、韓国側が事実を認めなかったため、日本国内では「妥協」との批判も。事件から5年経過した2023年、元韓国情報部員が「北朝鮮絡みの隠蔽」を証言し、再燃。
- 軍事・外交的教訓:日韓ホットライン強化や共同訓練の必要性を示唆。中国の2013年レーダー照射事件(海上自衛隊艦艇対象)と並び、「グレーゾーン」摩擦の典型例。2025年現在、日韓安保協力が進む中、過去のトラウマとして残っています。
この事件は、日韓の歴史的・領土的緊張を象徴するもので、証拠公開が国際的に注目を集めました。詳細は防衛省公式資料やWikipediaを参照ください。
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