デンマークのゲットー政策の詳細（2025年現在）並行社会法

デンマークのゲットー政策の詳細（2025年現在）

デンマークの「ゲットー政策」（正式には「並行社会（parallel societies）法」または「脆弱住宅地域（vulnerable residential areas）政策」）は、2010年から始まった一連の措置で、移民集中地域の社会問題（犯罪、失業、低教育、低所得）を解決し、統合を促進することを目的としています。かつて「ゲットー（ghetto）」と呼ばれていましたが、2021年に用語が変更され、現在は「並行社会」「変革地域（transformation areas）」「脆弱住宅地域」などと呼ばれています。政策の本質は変わらず、2030年までにこれらの地域を「解消」する目標を掲げています。

政策の歴史と変遷

2010年開始：政府が「ゲットーリスト」を公表開始。社会住宅地域（公的・非営利住宅）で特定の基準を満たす地域を指定。
2018年「ゲットーパッケージ」：包括的な法改正。犯罪の二倍罰則、1歳児からの義務保育（デンマーク価値観教育）、住宅再開発など。
2021年用語変更：批判（差別的用語）を受け「ゲットー」を廃止。「並行社会法」へ移行。
2025年現在：政策継続中だが、EU裁判所で差別性審査中（後述）。

指定基準（2025年現在の定義）

地域は少なくとも1,000人以上の住民がいる社会住宅地域で、以下の4つのうち少なくとも2つを満たす場合に「脆弱住宅地域」と指定されます：

18〜64歳の住民のうち、雇用・教育に従事していない割合が40%超。
犯罪有罪率が全国平均の3倍超。
30〜59歳の住民のうち、基礎教育のみの割合が60%超。
15〜64歳（学生除く）の平均所得が地域平均の55%未満。

さらに厳しい「変革地域」（旧「ハードゲットー」）は、非西洋出身者（non-Western immigrantsおよびその子孫）が50%超が追加基準で、5年連続指定の場合に適用。

「非西洋」の定義：EU27カ国、英国、北米、オーストラリア、ニュージーランド以外出身。主に中東・アフリカ・アジア系を指し、事実上人種・民族的差別と批判される。

主な措置

住宅再開発：変革地域では、2030年までに社会住宅の割合を40%以下に削減。建物売却、民間転用、解体、新築（私的住宅増加）で住民分散。
強制転居・退去：指定地域の住民が強制的に他の地域へ移住。例: コペンハーゲンのMjølnerparkenで数百世帯が影響。
犯罪・福祉対策：指定地域での犯罪に二倍罰則。家族再会制限、福祉給付制限。
教育・統合強化：1歳からの義務保育（デンマーク語・価値観教育）。学校での特別措置。
警察強化：過剰警備・監視。

2025年の状況

リストの最新数（2025年12月発表）：並行社会（旧ゲットー）は5地域（前年8から減少）、脆弱住宅地域は7地域。
全体として減少傾向だが、新規追加もあり。政策の「成功」と政府は主張。

批判とEU裁判所の動向

差別性：非西洋基準が民族起源に基づく直接差別と国際的に批判（UN、人権団体）。
2025年2月：EU最高裁判所の顧問弁護士（Advocate General）が「直接差別でEU人種平等指令違反」と意見。最終判決待ちだが、影響大（政策変更の可能性）。
効果の疑問：住民のスティグマ化、コミュニティ崩壊、強制転居による精神的負担。統合促進ではなく疎外を増大させるとの声。
支持側：政府は「統合成功、犯罪減少」と主張。左派政権（社会民主党）も継続。

この政策はデンマークの厳格移民統合の象徴ですが、EU法違反の可能性が高く、今後変更を迫られるかもしれません。詳細はデンマーク内務・住宅省の公式リストやEU裁判所判決を参照してください。