中国共産党の工作部の仕事

中央統一戦線工作部（UFWD）の概要

中央統一戦線工作部（United Front Work Department、略称：統戦部）は、中国共産党中央委員会の直属機関で、中国共産党（CCP）の「統一戦線工作」を担当する重要な部門です。中国共産党の創始者毛沢東が「三大法宝（魔法の武器）」の一つと呼んだ統一戦線戦略を執行する組織で、習近平政権下で特に強化されています。公式には党外勢力との連携を目的としますが、国内外での影響力拡大や情報収集を担い、欧米諸国では外国干渉や影響工作の懸念が指摘されています。

歴史

• 設立: 1942年、日中戦争期に設立。周恩来が初代部長を務め、国共合作（国民党との協力）などの抗日統一戦線を推進。
• 戦後: 1949年中華人民共和国成立後、文化大革命期（1966-1976年頃）に一時業務停止。
• 復活と拡大: 1979年に鄧小平の下で再設立。改革開放期に海外華僑の投資誘致などに活用。
• 習近平時代（2012年以降）: 役割が大幅に強化。2015年に「大統戦」概念を提唱し、全党的な事業に位置づけ。2018年の党・国家機関改革で、国家宗教事務局や国務院華僑事務弁公室を吸収し、民族・宗教・海外華人事務を統括。2020年に「中国共産党統一戦線工作条例」を施行し、制度化。

組織構造

• 位置づけ: 中国共産党中央委員会直属。部長は政治局委員級の高位幹部（2025年現在、李幹傑が部長）。
• 内部局: 複数の局からなり、主なものは以下の通り（2018年改革後）:
• 第一局: 民主党派（中国の衛星政党）関連。
• 第二局: 少数民族・宗教関連。
• 第三局: 香港・マカオ・台湾関連。
• その他: 非公有制経済（民間企業）、新社会階層（フリーランサーなど）、海外華人関連局（第9局など）。
• 全体で12局程度存在し、海外向け局も含む。
• 予算・規模: 2019年推定で関連予算は26億ドル超（外交部予算を上回る）。人員は数万人規模で拡大。
• 関連機関: 中国人民政治協商会議（CPPCC）、中国人民対外友好協会などが「公の顔」として機能。

主な役割と機能

• 国内:
• 党外勢力（民主党派、無党派人士、少数民族、宗教団体、民間企業家、知識人など）の取り込み・管理。
• 潜在的な反対勢力を中和し、党の統治を強化。
• 少数民族（チベット、ウイグルなど）や宗教（仏教、イスラムなど）の監督。
• 国外:
• 海外華僑・華人コミュニティの動員（忠誠心確保、投資・技術移転促進）。
• 台湾・香港・マカオでの統一工作。
• 外国のエリート（政治家、ビジネスパーソン、学者）への影響力行使。
• プロパガンダ、世論形成、技術・情報収集。
• 「大統戦」: 習近平の提唱で、統一戦線を党全体の事業とし、宣伝部や対外連絡部、人民解放軍と連携。

影響工作（Influence Operations）の側面

• 手法: 友好協会、華僑団体、学生組織などを通じた間接的なアプローチ。政治献金、招待旅行、メディア操作、脅迫なども指摘される。
• 対象: 海外中国人コミュニティ、外国政府・企業、反中勢力の抑圧（例: ダライ・ラマ支持者、ウイグル活動家）。
• 国際的な懸念:
• 米国（FBI）、英国（MI5）、オーストラリア、カナダなどで外国干渉・スパイ活動のツールと見なされ、警戒。
• 例: 米議会報告書（USCC）では、潜在的反対勢力の無力化と海外影響力拡大を指摘。
• 中国側は「友好交流」と主張し、干渉否定。
• 例: オーストラリアでの政治浸透、欧米での技術移転、台湾選挙への介入疑惑。

中央統一戦線工作部は、中国共産党の統治基盤強化と国際影響力拡大の鍵ですが、活動の不透明さが批判を招いています。公式情報は中国政府サイトで公開されていますが、海外視点では安全保障上のリスクとして議論されています。詳細は信頼できる国際報告書（例: ASPI、USCC）も参考にしてください。