DNA家系解析(Forensic Genetic Genealogy)の原理と活用
DNA家系解析とは、犯罪現場のDNAを民間の家系図データベース(GEDmatch、Family Tree DNAなど)と比較し、犯人の親族を特定して家系図を構築、犯人を絞り込む手法です。正式にはForensic Genetic Genealogy (FGG) と呼ばれます。
基本原理
- 犯人のDNAを全ゲノム解析(数百万のSNPを調べる)。
- これを家系図サイトの公開データベースにアップロード。
- 共有DNAの量から親等を推定(例: いとこレベルで数百cM共有)。
- 親族の家系図・戸籍・居住地などを伝統的捜査で追跡し、犯人を特定。
- 代表企業: Parabon NanoLabs(米国)。似顔絵予測と組み合わせることも。
犯罪捜査での活用例(主に米国)
- ゴールデンステート・キラー(2018年解決): 1970-80年代の連続殺人・強姦犯。GEDmatchで遠縁親族を発見、家系図構築でJoseph James DeAngeloを特定・逮捕。
- その他: 数百件の冷案(コールドケース)解決。身元不明遺体特定にも有効。
- 成功率: データベース人口の2%(米国で約600万人)でほぼ全米人をカバー可能。
| 手法 | 従来のDNA鑑定(STR型) | DNA家系解析(FGG) |
|---|
| 対象 | データベース一致のみ | 遠縁親族から逆追跡 |
| 強み | 直接一致で即特定 | 未登録犯人も特定可能 |
| 限界 | データベースにないと無力 | プライバシー問題・データベース依存 |
| 解決事例 | 余罪確認・直接逮捕 | 長期未解決事件多数 |
世田谷一家殺害事件での可能性
犯人のDNAが豊富に残されており、祖先推定(父系: 韓国・中国寄りアジア系、母系: 欧州・コーカサス系)や年齢推定(犯行時30代、メチル化解析)は進んでいますが、家系解析(FGG)は日本で未活用です。
- 理由(法規制):
- 日本ではDNA鑑定を「個人識別のみ」に制限(身体的特徴・祖先情報はプライバシー侵害)。
- 民間家系図データベースが少なく、GEDmatchなど国際サイトへのアップロードは法的に困難。
- 遺族・区議会が法改正を求め(2024-2025年意見書提出)、似顔絵や家系解析の活用を要望中。
- 期待される効果:
- 犯人が混血可能性が高いため、国際データベースで親族発見のチャンス。
- 米国のようにParabon社活用で似顔絵+家系図構築可能。
- 2025年現在、警視庁はY染色体で国内2000人以上照合も一致なし。FGGで突破口になる可能性大。
この技術はプライバシー論争を呼んでいますが、未解決事件解決の強力ツール。世田谷事件のように証拠豊富なケースで特に有効で、将来的な法整備が鍵です。情報提供は警視庁成城署へ。
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