自民党の旧安倍派(清和政策研究会)をめぐる政治資金パーティー裏金事件は、2023年末に表面化したスキャンダルで、派閥がパーティー収入の一部をキックバック(還流)として議員に還元し、政治資金収支報告書に虚偽記載(不記載)した疑いが核心です。東京地検特捜部は2024年以降、複数の議員を不起訴処分としてきましたが、市民団体や大学教授による刑事告発を受け、検察審査会(検審)が「国民の目」として審査を進めてきました。
今回、焦点となったのは加田裕之参院議員(兵庫選挙区、55歳、自民党)。加田氏の政治団体は2020〜2022年に旧安倍派から計648万円のキックバックを受け取りながら、収支報告書に記載していなかったとして、政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で告発されました。特捜部は今年2月、嫌疑不十分で不起訴と判断していましたが、2025年9月25日、東京第1検察審査会がこれを「不起訴不当」と議決。14日、公表されました。これは、議員本人に対する検審の「不当」議決としては本事件で初の事例です。一方、同日発表された簗和生衆院議員(栃木3区)の不起訴(起訴猶予、1746万円不記載)については、東京第5検察審査会が「不起訴相当」と判断し、刑事責任は免れました。 0 1 2 6
加田氏の不起訴不当議決は、特捜部に再捜査を義務づけます。検審の議決書では、「検察官は一般的に考えられる捜査をしていない」「議員は収支報告書の記載に監督義務があり、重過失を検討すべき」と厳しく指摘。加田氏の政策秘書や政治団体の会計責任者・事務担当者(計3人)についても同様に「不当」とされ、組織的な不正の可能性を浮き彫りにしています。 6 10
検察審査会は、検察の不起訴処分に対する「第二の目」として機能する11人の市民委員で構成され、告発人や弁護側からの陳述を基に審査します。加田氏の場合、特捜部は当初「故意の証拠が不十分」と判断(不記載額が3000万円未満の基準で立件見送り)しましたが、検審はこれを「捜査の怠慢」と断じました。具体的には:
この決定は、2025年7月の参院選で加田氏が当選した直後というタイミングで、選挙後の「クリーンイメージ」を揺るがすもの。X(旧Twitter)上では、「タイミングが絶妙すぎる」「自民の党内融和を阻む民意の声」といった反応が見られ、左派・リベラル層から「ようやく検察が動くか」との歓迎、保守層から「左翼の妨害」との批判が交錯しています。 22 24 30
この議決は、自民党裏金事件の構造的問題を露呈しています。まず、金額基準の恣意性:特捜部は不記載額3000万円未満を「立件見送り」の目安にしていましたが、検審は「民意」を重視し、これを覆す判断を下しました。これは、2025年8月の類似事例(虚偽記載3000万円未満の立件転換)で検察が「民意重視」を宣言した流れを反映。裏金総額が数百億円規模の事件で、金額だけで「軽微」とするのは国民感情に反すると指摘されています。 31
次に、自民党の責任逃れ文化:加田氏のケースは「秘書・会計担当者のミス」との主張が通用しなかった好例。事件全体で、萩生田光一氏の秘書が罰金処分になったり、岡田直樹氏が「派閥の指導」と証言したりと、組織的な隠蔽が明らかになっていますが、自民党は「党内融和」を優先し、裏金議員の要職復帰を進めています(例:高市早苗氏の「解決済み」発言)。これが検審の「不当」議決を招く要因で、党の信頼失墜を加速させるでしょう。 24 27 33
検察側もジレンマを抱えています。特捜部は「証拠不足」を理由に不起訴を連発してきましたが、検審の介入で再捜査が増え、負担が膨張。過去の森友・加計問題のように「政治的圧力」の疑念も残り、検察の独立性が問われています。一方、簗氏の「相当」議決は、特捜部の判断を支持する形で「バランス」を取った可能性があり、検審の判断が一枚岩でないことを示唆します。 8 12
この事件は、単なる「金」の問題ではなく、日本政治の透明性と責任の欠如を象徴。検審の議決が「不当」を突きつけた今、特捜部の再捜査が真の「民意」を反映するかどうかが鍵です。