2025年11月7日、政府は今国会(第216回国会)への提出を検討中の「防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案」の概要を明らかにしました。この改正案の目玉は、自衛官の基本給(俸給)を全世代・全号俸で引き上げる内容で、特に高卒の「2等陸士」(2士)初任給を現行の224,600円から239,500円(約6.7%増、過去最高額)へ、自衛官候補生の初任給を179,000円から195,000円(約9.0%増)へ引き上げるものです。 また、ボーナス(賞与)も一般隊員の年間支給月数を4.50ヶ月分から4.60ヶ月分へ引き上げ、学生・生徒の分も3.40ヶ月分から3.45ヶ月分へ微増。 これにより、平均年収は若手で約55万円、中堅で約26万円の増額が見込まれ、定員充足率の向上と中途退職防止を狙っています。 石破茂首相の看板政策として位置づけられ、防衛大臣の小泉進次郎氏が推進を主導。関連経費は2025年度予算案に計上予定で、改正法の成立は2025年12月中の国会閉会までに目指されます。
自衛隊の定員は約24万7,000人ですが、2025年3月時点の充足率は90.4%にとどまり、特に最前線部隊(一般曹・士階級)の充足率は67.8%と深刻な定員割れが続いています。 2023年度の採用充足率は過去最低の51%、中途退職者は6,258人(2019年度比3割増)と、少子化に加え、過酷な勤務環境や民間企業との給与格差が原因です。 これに対し、政府は2024年12月20日に「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する基本方針」を閣議決定。33項目の手当新設・拡充(例: 指定場所生活調整金、最大120万円支給)、自衛官候補生制度の廃止(当初から自衛官採用へ移行)、定年引き上げ(一般隊員56歳→58歳検討)、隊舎個室化、再就職支援強化などを柱に据えました。
この改正案は、基本方針の具体化として2024年12月9日に第216回臨時国会へ提出されたもので、2025年度から段階的に実施。従来は若手中心の引き上げでしたが、今回は中堅・ベテランも含めた全世代対象へ拡大し、離職防止を強調。防衛費増額(2023-2027年度で43兆円)の人的基盤強化の一環で、石破政権の安全保障政策の目玉です。
改正案の核心は、俸給表の全号俸月額引き上げで、民間給与との較差解消を目的としています。従来の公安職俸給表(警察官ベース、昭和25年起源)を本格改定するのは異例で、初任給の大幅アップは「自衛官候補生」廃止と連動。入隊直後から任務遂行可能とし、モチベーション向上を図ります。 これにより、20歳士長クラスで年収55万円増、35歳2等曹で26万円増が見込まれ、平均年収は約640万円へ。ボーナス増額も、生活安定に寄与します。
意義は二重的:①採用促進(応募者数増加で充足率95%超え目標)、②離職防止(中堅のスキル流出抑制)。日本周辺の脅威増大(中国の海洋進出、北朝鮮ミサイル)で、防衛力の人的基盤が脆弱化する中、給与改善は「命を懸ける職業」の報酬として不可欠。X上では「国を守る人たちの生活を守るのは安全保障の一部」「災害時に助けられた自衛官に感謝、もっと上げて」と肯定的意見が大半で、国民の支持基盤を固めています。
一方で、課題も顕在。総額は数百億円規模(2025年度予算計上)と推定され、防衛費増税(法人税・たばこ税等)との連動が批判を呼んでいます。 Xでは「防衛増税しといてこれかよ」「インフレ時に支出増は財政危機を招く」との声も。 また、給与偏重の改革は、勤務環境(老朽隊舎、24時間待機)の改善を後回しにしかねず、根本的な「過酷さ」解消には不十分。女性自衛官の増加(現在15%)を考慮したトイレ設備・宿舎改修の要望もXで目立ちます。 全体として、この改正は「即効薬」として有効ですが、長期的なキャリア支援(定年後再就職率向上)との連動が鍵。成功すれば、石破政権の支持率向上に寄与するでしょう。
改正案は今国会(11月28日~12月21日)で提出・審議され、与党多数で12月成立の見込み。2025年度予算案との連動で、関連経費(給与増分約200億円)が承認され、2026年4月から初任給適用開始。Xの肯定的反応が後押しし、審議はスムーズですが、野党(立憲民主党等)の「増税とのセット批判」で修正協議の可能性あり。充足率は2025年度末で92%へ微増予想。
総じて、この改正は自衛隊の「再生策」としてポジティブ。全世代引き上げが定着すれば、2027年までに充足率98%超えの「質の高い防衛力」実現へつながるでしょう。国民の声(X反応)を反映した環境改善の継続が、持続可能性を決める鍵です。