坂口志文氏(2025年ノーベル生理学・医学賞)の研究詳細坂口志文氏(大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任教授、74歳)は、「制御性T細胞(Regulatory T cells, 略してTreg)の発見と免疫寛容のメカニズム解明」により、2025年ノーベル生理学・医学賞を共同受賞しました。共同受賞者は米国のメアリー・ブランコ氏(ハーバード大)とアレクサンダー・ルドルフ氏(スタンフォード大)です。坂口氏の功績は「免疫が自分を攻撃しない仕組み」を世界で初めて分子レベルで証明した点にあり、現在のがん免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)や自己免疫疾患治療の基礎となっています。1. 研究の核心:制御性T細胞(Treg)の発見
2. 何を守っているのか?「免疫寛容」の仕組み免疫系は「敵(ウイルス・がん)」を攻撃する一方で、「自分(自己抗原)」を攻撃しないようにしなければなりません。
坂口氏が解明したTregの役割は以下の通りです:
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| 自己反応性T細胞の抑制 | 自分を攻撃しようとするT細胞を物理的・化学的に抑え込む |
| サイトカイン分泌 | IL-10、TGF-βなどを出し、周囲の免疫を鎮静化 |
| 接触依存性抑制 | Tregが直接相手のT細胞にくっついて機能を止める |
| 組織特異的制御 | 腸、皮膚、肺など各臓器に特化したTregが存在 |
→ これにより「自己免疫疾患の防止」と「移植臓器の拒絶抑制」が可能に。3. 現在の医療への応用(坂口研究の「実を結んだ」例)
| 疾患・治療 | 坂口研究の貢献 |
|---|---|
| がん免疫療法(オプジーボなど) | Tregが腫瘍内で免疫を抑えている → 抗CTLA-4抗体や抗PD-1抗体でTreg機能を弱め、がん攻撃を復活させる |
| 自己免疫疾患(関節リウマチ、1型糖尿病) | Tregを増やす・活性化する薬の開発が進む(低用量IL-2療法など) |
| 臓器移植 | Tregを移植前に活性化させて拒絶反応を抑える臨床試験(米国・欧州で進行中) |
| アレルギー・炎症性腸疾患 | 腸内Tregを増やす治療(酪酸菌など)が実用化 |
4. 坂口氏の研究スタイルと名言
5. 2025年ノーベル賞講演での予定テーマ(12月7日)タイトル(仮):「From Discovery of Regulatory T Cells to the Future of Immune Tolerance Therapy」
内容:
坂口氏の研究は「免疫学の常識を180度変えた」だけでなく、今まさに患者さんに届き始めている、まさに「生きているノーベル賞」と言えるものです。