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スウェーデンのアジア人差別史の概要

スウェーデンのアジア人差別史の概要

スウェーデンは人権・平等先進国として知られますが、アジア人(主に東アジア・東南アジア系)に対する差別は歴史的に存在し、「見えにくい」または「モデルマイノリティ」として扱われやすい特徴があります。アジア系人口は約20万人以上(移民・養子・その子孫含む)で、タイ人、中国人、韓国人、ベトナム人などが多く、国際養子縁組(特に韓国から)が大きな割合を占めます。差別は黒人やムスリム向けほど露骨ではなく、ステレオタイプ(勤勉、従順)やマイクロアグレッション(微妙な無視・異質視)が主流ですが、COVID-19で急増しました。

歴史的背景

  • 20世紀前半: アジア人移民は少なく、差別史は限定的。スウェーデンは植民地主義の歴史(アフリカ・アジアでの活動)を持ち、優生学・人種科学が影響。アジア人は「異質で劣位」とのオリエンタリズムが残るが、直接的な被害は少ない。
  • 1970年代以降: ベトナム難民受け入れや国際養子縁組増加(韓国を中心に数万人)。養子は「スウェーデン化」されやすいが、アイデンティティの喪失や異質視を経験。アジア人は「良い移民」(勤勉・犯罪率低)とポジティブに描かれる一方、性的ステレオタイプ(女性のエキゾチック化)が生まれる。
  • 2000年代: 移民増加で日常差別報告増。就職・住宅での間接差別、メディアでのステレオタイプ。アジア人は黒人/中東系より目立たないが、「永遠の外国人」として扱われやすい。

現代の主な事例と傾向

  • 日常的なマイクロアグレッション: 「どこから来たの?」「英語上手」「ching chong」などのジョーク。学校でのいじめ(特に養子)、白人男性とアジア人女性のカップルへの偏見(「メールオーダーブライド」視)。Redditなどの体験談では、子供時代に目立つが大人になると減る声が多い。
  • COVID-19パンデミック(2020年以降): 中国起源のウイルスで反アジア人感情急増。Human Rights Watch報告では、バスでの押しつけ、避けられる、暴言(「ウイルス」呼ばわり)。アジア系ビジネスボイコットやオンライン嫌がらせも。ヘイトクライム統計でアジア人が初めて言及され、グローバルな反アジアヘイトの影響大。政府対応は弱く、政治家が助長しなかったものの、十分な対策不足。
  • 養子縁組者の体験: 韓国などから養子されたアジア系スウェーデン人が多く、差別を内面化しやすい。研究(Tobias Hübinetteら)で、異質視・人種ジョークの被害を指摘。「アジア人として認識されにくい」問題。
  • 統計と社会的位置: ヘイトクライム統計でアジア人特化データ少なく、異文化嫌悪(xenophobia)が主。アジア人は「モデルマイノリティ」として中東/アフリカ系より好印象だが、それが差別を軽視させる。雇用格差は存在するが、他の少数派ほど深刻視されない。

全体の特徴と考察

スウェーデンの差別は構造的(無自覚な文化中心主義)で、アジア人向けは「ポジティブステレオタイプ」がマスク。フィンランド同様、「透明な差別」として認識されにくく、ジョークとして許容される傾向。COVIDで可視化され、公的議論(公共放送特集)が増えたが、研究は少ない。移民政策の厳格化や右派政党台頭で、潜在的なリスクあり。一方、多文化主義の伝統から、明らかなヘイトは少数。個人差大きく、ストックホルムなど都市部で目立つが、地方では少ない。

将来的にはアジア系人口増加で変化が予想され、反差別運動(#StopAsianHateの影響)が鍵。スウェーデン社会の「色盲」志向が、問題の無視を助長する側面もあります。

katchan17

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