日本のインボイス制度(適格請求書等保存方式)の詳細説明(2025年12月現在)
インボイス制度は、正式名称を適格請求書等保存方式といい、2023年(令和5年)10月1日から導入された消費税の仕入税額控除に関する制度です。複数税率(標準10%・軽減8%)の下で、取引の消費税額と適用税率を正確に把握・伝達し、公正な課税を実現するための仕組みです。従来の区分記載請求書等保存方式から移行し、仕入税額控除を受けるために適格請求書(インボイス)の保存が原則必須となりました。
制度の目的
- 売手が買手に対して、正確な適用税率と消費税額を記載した請求書を交付。
- これにより、消費税の二重課税防止(仕入税額控除)を適正化し、税務の透明性を高める。
- 海外(EUなど)では標準的な仕組みですが、日本では軽減税率導入に伴う複数税率対応が主な背景。
適格請求書(インボイス)の記載事項
適格請求書には、以下の事項を記載する必要があります:
- 発行者の氏名または名称および登録番号(Tから始まる13桁の番号)。
- 取引年月日。
- 取引内容(軽減税率対象品目は※など目印)。
- 税率ごとに区分した対価の額(税抜または税込)と適用税率。
- 消費税額(または端数処理後の税額)。
- 交付を受ける事業者の氏名または名称。
簡易インボイス(小売業・飲食業など向け、1万円未満の取引)では一部省略可能。
適格請求書を発行できる事業者
- 適格請求書発行事業者のみ(課税事業者に限る)。
- 登録申請:税務署に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出。e-Tax推奨。
- 登録番号は通知され、国税庁の公表サイトで検索可能。
- 免税事業者は登録不可(登録すれば課税事業者になる)。
仕入税額控除の要件
- 買手(課税事業者)は、適格請求書と一定の帳簿を保存。
- 適格請求書がない場合、原則として仕入税額控除不可(免税事業者からの仕入など)。
経過措置(負担軽減のための特例)
制度開始直後の急激な負担を緩和するため、以下の措置が設けられています(2025年12月現在継続中)。
- 免税事業者等からの仕入に係る経過措置(2023年10月1日~2029年9月30日)
- 適格請求書がない仕入でも、一定割合の控除が可能。
期間 控除率 備考
2023年10月1日~2026年9月30日 80%控除 現在適用中
2026年10月1日~2029年9月30日 50%控除
2029年10月1日以降 0%(控除不可) 要件:区分記載請求書と同様の請求書 + 帳簿に「80%控除対象」など記載。- 2割特例(小規模事業者向け負担軽減)
- 対象:インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者になった事業者。
- 内容:納税額を売上税額の2割に軽減(仕入税額控除の複雑計算不要)。
- 適用期間:2023年10月1日~2026年9月30日までの課税期間。
- 申告時に選択(事前届出不要)。
- その他の軽減措置
- 1万円未満の少額取引:適格請求書の保存不要(一定規模事業者向け)。
- 少額返還インボイス交付義務免除(1万円未満の値引・返品)。
2025年の最新状況- 制度は継続中。廃止や大規模改正の予定はなく、定着が進んでいます。
- 一部で課税逃れ利用の指摘あり(財務省)。
- 電子インボイス(Peppol対応)の推進が進み、デジタル化が奨励。
- 経過措置の縮小(2026年以降80%→50%)が近づいているため、免税事業者との取引見直しを推奨。
事業者への影響と対応- 課税事業者(買手側):取引先が免税事業者の場合、経過措置活用で控除可能だが、将来的に負担増。登録を促すか取引見直しを。
- 免税事業者(売手側):登録しないと取引減少リスク。登録すれば課税義務発生(2割特例活用可)。
- 共通:システム対応(インボイス対応ソフト導入)、区分経理の徹底。
詳細は国税庁の公式サイト(インボイス特設ページ)やQ&Aで確認を。相談窓口(税務署・インボイス相談センター)も利用可能です。制度は複雑ですが、経過措置を活用することで負担を抑えられます。
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