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創氏改名の歴史的背景を詳しく

創氏改名の歴史的背景

創氏改名(そうしかいめい)は、日本による朝鮮統治期(1910〜1945年)の後期、1939〜1940年に施行された政策です。これは、朝鮮総督府が朝鮮人の姓名制度を日本式に変更させる皇民化政策の一環で、「内鮮一体」(日本人と朝鮮人の一体化)を推進する中で実施されました。以下に、その背景、内容、実施過程、評価の議論を詳しく説明します。

1. 歴史的・政治的背景

  • 日韓併合と初期の同化政策:1910年の日韓併合後、日本は朝鮮を植民地として統治し、徐々に同化(同化政策)を進めました。初期は教育や言語を通じた文化同化が主でしたが、1930年代後半になると、日中戦争(1937年開始)と第二次世界大戦の影響で戦争動員が急務となり、朝鮮人の人的・物的資源を活用する必要が生じました。
  • 皇民化政策の強化:1938年頃から、志願兵制度の導入、朝鮮語教育の制限、神社参拝強制、国民精神総動員運動などが進み、朝鮮人を「皇国臣民」として天皇中心の忠誠を植え付ける政策が加速。創氏改名は、これらの延長線上で、朝鮮の伝統的な家族・血統制度を日本式の「家(いえ)」制度に近づけ、民族意識を弱める狙いがありました。
  • 政策の起源:朝鮮には伝統的に「姓」(血統を表す、例: 金、李、朴)と「本貫」(出身地)が重視され、家族名としての「氏」は存在しませんでした。一方、日本では「氏」(家族名)が全員共通で、夫婦同氏が基本。これを朝鮮に導入し、宗族中心の儒教的家族観を家族中心の日本式に変革しようとしたものです。歴史学者(例: 水野直樹)は、これを天皇への忠誠を強めるための制度改革と指摘しています。
  • 施行時期:1939年11月、朝鮮民事令改正で公布。1940年2月11日(紀元節)から施行され、8月10日までの6ヶ月間で届け出を求めました。

2. 政策の内容

  • 創氏と改名の区別
  • 創氏:新たに「氏」(家族名)を作成。従来の「姓」(金など)は戸籍に残すが、公的名称は新「氏」優先。
    • 設定創氏:任意届け出で日本風(例: 山田)や独自の氏を作成。
    • 法定創氏:届け出なしの場合、自動的に家長の「姓」を「氏」とする(例: 金家 → 金氏)。
  • 改名:個人名(下の名前)を日本風に変更。任意で有料。
  • 特徴:戸籍には従来の「姓・本貫」と新「氏名」の両方が記載され、完全な抹消ではなく追加・優先変更。妻は夫の「氏」に自動統合(夫婦同氏導入)。
  • 目的の公式説明:総督府は「朝鮮人の要望に応じた恩恵」「内鮮一体の実現」と宣伝しましたが、実際は戦争協力のための同化強化でした。

3. 実施過程と反応

  • 届け出率の推移:開始直後は低調(1940年5月時点で約7-8%)。その後、総督府が学校・職場・行政を通じて圧力をかけ、8月までに約80%(一部資料で84%)が届け出。多くの場合、姓をそのまま氏とした法定創氏や、本貫由来の氏を選択。
  • 抵抗と強制の実態:自殺者や拒否運動が発生。届け出拒否者は就職・進学・配給で不利、批判者は治安法で処罰。韓国側史料では「半強制的」と評価され、日本側の一部も地方での過度な強制を認めています。
  • 戦後:1945年の解放後、朝鮮半島(南北両方)で即時廃止・姓名復旧令発行。在日朝鮮人の多くがこの時期の「氏」を通名として使用した遺産が残っています。

4. 評価と議論の多角性

この政策は日韓間で解釈が大きく異なり、歴史認識の対立点となっています。

  • 韓国・北朝鮮側の主流見解:民族抹殺・強制的な文化ジェノサイド。血統重視の朝鮮伝統を破壊し、戦争動員のための皇民化ツールと批判。多くの史料で「日本式姓名強要」と呼称。
  • 日本側の見解の分布
  • 強制性を強調する説(左派・進歩派):事実上の強制で、抵抗を抑圧した人権侵害。
  • 非強制性を強調する説(一部保守派):法的に任意で、届け出なしでも姓を氏として存続可能。朝鮮人の利便性(同姓多さの混乱解消)も考慮したと主張。
  • 中立的・学術的見解(例: Wikipediaや歴史研究):法令上は創氏自体が最終的に全員適用(法定創氏含む)で実質強制。改名は任意だが、社会的圧力で高率達成。家族制度改革が本質で、単なる名前変更ではない。
  • 現代的影響:在日コリアンの通名問題や、植民地支配の責任論で議論され続けています。バランスの取れた研究(例: 水野直樹『創氏改名』)では、政治的同化のツールとして位置づけつつ、朝鮮伝統の宗族維持を部分的に許容した複雑さを指摘。

創氏改名は、植民地主義の象徴として、単なる行政政策を超えた文化的・精神的影響を与えた事案です。諸資料から、公式の「任意性」と実態の「圧力」のギャップが核心的な争点であることがわかります。

katchan17

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