心臓血管外科(心臓・大血管・末梢血管の手術を専門とする診療科)では、若手医師の離れが加速し、深刻な医師不足に直面しています。これは消化器外科と並ぶ外科系全体の課題ですが、心臓血管外科は特に高齢化・地方偏在が目立ち、2025〜2026年に日本循環器学会が異例の緊急声明を発表するほど切迫した状況です。以下に最新情報(2025年末〜2026年2月時点)をまとめます。現状とデータ
- 医師数の推移と不足推計:
- 心臓血管外科医は大都市圏に集中し、地方では大学病院ですら新人確保が困難。地方の小規模施設(2〜3人で維持)では高齢化が進み、いつ崩壊してもおかしくない状態。
- 日本循環器学会(2025年11月声明): 循環器内科・心臓血管外科の若手(20代)増加ペースが鈍く、全体医師数増加(2012年30万人→2022年34.3万人)とは逆行。地方の減少幅が特に大きい。
- 専門医平均年齢が高齢化し、30年後には循環器医師数が約2割減少、60歳以上が半数を占める可能性。
- 日本心臓血管外科学会会員数は微増傾向だが、絶対数が少なく、若手修練途中で他科転向も多い。
- 地方の深刻さ:
- 地方では新人ゼロの施設が増加。心臓血管外科医の偏在が顕著で、地方医療崩壊リスクが高い。
- 緊急手術対応が難しくなり、急性心筋梗塞などの死亡率上昇が懸念。
- 全体背景:
- 心疾患の高齢化による需要増加(がん・心疾患増加)と逆行して医師減少。
- 2025年12月、日本循環器学会声明「わが国の心臓血管外科医療を守る – 未来の命をあなたとともに」: 「持続困難な状況に追い込まれつつある」と明記。漫画『Dr.Eggs』が描く危機を裏付ける内容。
主な原因
- 過酷な労働環境: 長時間・夜間・緊急手術多発、休日出勤常態化。修練期間が長く(専門医取得まで卒後10年以上、平均37歳合格)、重い責任(命直結)。
- 待遇・給与の見合わなさ: 専門性・リスクの高さに比して給与が低く、大学病院では手取り20万円台も。外勤制限(働き方改革)で総収入減少。
- ワークライフバランスの悪さ: 女性医師の育児・ハラスメント対策不足、子供の誕生日すら祝えないケース。
- キャリアパスの厳しさ: 施設集約化が進む中、地方の教育環境悪化。情報強者化した若手が「職人技の花形感」より負担を優先。
- 比較的他科との違い: 呼吸器外科などは増加傾向だが、心臓血管外科は「ハードだが専門性が高い」層に一部惹きつけるものの、全体離れが加速。
対応策と展望
- 2026年度診療報酬改定:
- 地域医療体制確保加算2新設: 若手減少診療科(消化器外科・心臓血管外科・循環器内科など)対象に、勤務環境・処遇改善を評価(入院初日720点増)。要件: 常勤医3人以上、夜勤明け休日確保、時間外労働漸減(2026年1635時間以下)。
- 外科医療確保特別加算: ハイボリュームセンターでの長時間高難度手術インセンティブ、休日・時間外加算緩和。
- これにより病院が算定すれば若手給与向上・負担軽減につながる。
- 施設集約化の推進:
- 働き方改革・少子化・患者減少を後押しに、心臓血管外科手術の集中(volume-outcome関係で成績向上)。日本心臓血管外科学会が地域グループミーティング開催。
- 学会・病院の取り組み:
- 若手育成プログラム、広報活動(医学生向け)、女性支援、ハラスメント対策。
- 広島大学のような待遇改善モデル(外科系手当120万円/年など)拡大。
- タスクシフト・シェア: 看護師など他職種への業務移管、緊急対応の輪番制。
- 医師偏在是正パッケージ(2026年4月施行予定): 外来医師過多区域での開業規制、重点支援区域での確保策。シーリング(専攻医採用上限)見直しで心臓血管外科の確保優先。
- 課題: 給与だけ上げても増えない可能性(厚労省林課長指摘)。根本は労働環境改善とキャリア魅力向上が必要。
心臓血管外科の危機は消化器外科と並ぶ外科系全体の問題で、救える命が救えなくなるリスクが現実的。政策は2026年から本格化しますが、効果発現まで時間がかかり、現場の声反映が鍵です。
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