フィン人党（Perussuomalaiset、英語ではFinns Party）は、フィンランドの右翼ポピュリスト政党で、ナショナリズム、反移民、ユーロ懐疑主義を掲げています。1995年に設立され、元々はフィンランド農村党（SMP）の後継として生まれた小政党でしたが、2008年の金融危機以降、急速に支持を拡大。フィンランドの政治風景を大きく変える存在となり、伝統的な中道・左派政党の票を食い、右傾化を加速させました。2025年現在、党首はリッカ・プルラ（Riikka Purra）で、党員数は約3万人、支持基盤は主にブルーカラー労働者や地方住民です。 23 32
党の歴史は、1995年の設立から低迷期を経て、2011年の「jytky（衝撃）」と呼ばれるブレイクスルーまでを分けられます。設立当初は1議席しか獲得できず、党の存続すら危ぶまれましたが、ティモ・ソイニ（Timo Soini）党首の下で反EU・反移民のポピュリズムを武器に台頭。2011年総選挙で19.1%の得票率と39議席を獲得し、第3党に躍進しました。これにより、フィンランドの多党制が崩れ、左派・中道の票が流出する「ポピュリズムの波」が起きました。 32
その後、2015年総選挙で17.7%（38議席）を維持し、シピラ内閣（中道右派連立）に入閣。外相ポストを獲得しましたが、党内の極右派と穏健派の対立が激化し、2017年に党分裂（ブルー・リフォーム結成）。支持率が一時低下しました。しかし、2019年選挙で17.5%（39議席）を回復し、野党として影響力を維持。2023年総選挙では過去最高の20.1%（46議席）で第2党となり、ペッテリ・オルポ（Petteri Orpo）首相率いる右派連立（国民連合党、キリスト教民主党、スウェーデン人民党との）に入閣。7閣僚ポスト（財務相、内務相など）を獲得し、ユッシ・ハラホ（Jussi Halla-aho）が議長に就任しました。 23 32
2024年欧州議会選挙では7.6%（1議席）と不振に終わり、2019年の13.8%（2議席）から後退。2025年地方・地域選挙では支持率が7.6%に急落（前回の14.5%から半減）、700以上の議席を失いました。一方、2025年10月のYle世論調査では14.9%と回復傾向にあり、2026年総選挙に向けた巻き返しを図っています。 24 28
フィン人党は、連立与党としてフィンランドの政策を右傾化させ、特に移民・福祉・EU関連で顕著な影響を発揮しています。
これらの政策は、フィンランドの「福祉国家モデル」を変革し、欧州全体の右派ポピュリズム（スウェーデン民主党やフランス国民連合との類似）を象徴。党の台頭は、2011年以降の選挙で中道政党の崩壊を招き、左右ブロック化を促進しました。 30 31
党の最大の影は、人種差別・極右とのつながりです。党員の過半数が「特定の民族は現代社会に適応できない」との主張に同意（2011年調査）し、党首ハラホは2012年に民族扇動罪で有罪。2023-2025年に、党員のSS（親衛隊）遺産支援、ネオナチイベント参加、銃器脅迫事件が相次ぎ、若手組織が破産・解散。2025年12月のミス・フィンランド事件（アジア人差別ジェスチャー擁護）では、党議員の投稿が国際炎上を招き、X上で「#BoycottFinland」がトレンド。党は「表現の自由」と擁護しましたが、支持率回復を阻害。 0 3 8 32
これにより、党は「フィンランドの白人至上主義」を象徴する存在となり、国際イメージを損ないました。政府内では、13件の不信任動議（2023-2025年）が提出され、党閣僚が標的に。フィンランドの「人権先進国」地位が揺らぎ、移民コミュニティの孤立を助長しています。 26 31
2025年現在、連立与党としての影響力は強いものの、地方選挙敗北とラシズム論争で支持基盤が揺らぎ、2026年総選挙で野党転落の可能性が高いです。党は「国民の声」を強調し、反エリート主義で巻き返しを図りますが、欧州右派の低迷（2024年EU選挙）と連動し、衰退リスク大。全体として、フィン人党はフィンランドを「ポピュリズムの北欧モデル」に変え、移民・EU政策の転換を強いましたが、社会的分断を深め、民主主義の脆弱性を露呈。ポジティブに転じれば、極右の「政府参加による穏健化」（デンマークモデル）が期待されますが、未解決のラシズム問題が最大の課題です。 26 27