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外務省は14日、中国の呉駐日大使を同省に呼び出し、外務事務次官が抗議したと明らかに。 ニュース解説分析まとめと今後の予想

ニュースの概要

2025年11月14日、外務省は中国の呉江浩駐日大使を同省に正式に呼び出し、船越健裕外務事務次官が強く抗議したと発表しました。この抗議は、高市早苗首相の国会答弁をめぐる一連の外交摩擦の延長線上にあるものです。具体的には、首相が「台湾有事は日本の存立危機事態になり得る」と述べたことに対し、中国側が猛反発を示し、特に薛剣駐大阪総領事のX(旧Twitter)投稿が火種となりました。薛総領事は投稿で「汚い首は斬ってやるしかない」などの過激な表現を使い、日本側を侮辱する内容を発信。これに対し、日本政府は10日にも抗議していましたが、14日の呼び出しは事務次官レベルでの最高位の対応として、毅然とした姿勢を強調する形となりました。中国側は呉大使を通じて自国の立場を主張しましたが、日本側は従来の政府見解に基づき、即座に反論しています。

解説と分析

背景と経緯

  • 発端の高市首相答弁: 高市早苗首相は最近の衆院予算委員会で、台湾有事(例: 中国による台湾封鎖や武力行使)を「日本の存立危機事態」と位置づけ、集団的自衛権行使の可能性を指摘しました。これは従来の日本政府見解(「台湾有事は日本有事」として間接的に危機意識を示すもの)と整合しますが、首相の直接的な表現が中国の「レッドライン」(台湾統一の内政不干渉)を刺激。中国外務省の孫衛東外務次官は13日、日本の金杉憲治駐中国大使を呼び出し、「極めて悪質な発言」として撤回を強く要求しました。中国国防省や台湾事務弁公室も同調し、「日本が介入すれば中国人民解放軍の鉄壁に血を流す」といった脅迫めいた警告を発信しています。
  • 薛総領事の投稿問題: 中国側の反発が頂点に達したのが、薛剣総領事のX投稿です。投稿は高市首相の答弁を「汚い首」と揶揄し、脅迫的なニュアンスを含むもので、外交官の品位を欠くとして日本国内で強い反発を呼びました。大阪市議会は同日、謝罪を求める決議を可決。外務省はこれを「極めて不適切な発信」と認定し、削除と適切対応を求めています。中国側は薛氏を擁護しており、両国間の感情的な対立を象徴しています。
  • 日中の応酬の構造: これは相互抗議の連鎖です。中国は13-14日に日本大使を呼び出し、日本は14日に中国大使を召致。両国とも相手の「内政干渉」を非難しつつ、軍事・安全保障面での緊張を露呈しています。日本側は「毅然とした対応」をアピールしつつ、日中関係の急速悪化を避けたい本音も透けています。一方、中国は抗日戦勝80周年を控え、国内反日世論を煽る形で強硬姿勢を強めています。

分析: 影響と含意

  • 外交的・安全保障面: この事件は、日中間の信頼をさらに損ない、尖閣諸島や東シナ海での偶発衝突リスクを高めます。高市政権は発足直後に米中首脳会談を成功させ「滑り出しの良さ」を示していましたが、台湾問題で中国の逆鱗に触れ、早期の外交的孤立を招く可能性があります。中国の反応は異例の速さと強度で、習近平政権の台湾統一意欲が背景にあり、日本を「反中陣営」の一員として位置づけています。一方、日本は安保関連法の枠組みを活用し、米国との同盟強化を急ぐでしょうが、経済依存(貿易額の20%超が中国向け)のジレンマを抱えています。
  • 国内政治面: 日本国内では保守層から高市首相の強硬姿勢を支持する声が強く(X上で「本気を見せた」「ペルソナ・ノン・グラータ宣言を」などの投稿が散見)、野党(例: 日本共産党)からは「高市氏の答弁が緊張を招いた」との批判も。薛総領事の投稿はヘイトスピーチとして人権問題化し、地方自治体(大阪)の反発を招いています。中国国内では反日感情が高まり、ボイコット運動の再燃リスクあり。
  • 国際的文脈: 米中対立の狭間で、日本は「台湾有事=日本有事」の論理を国際的にアピールするチャンスですが、中国の「武力介入警告」はASEAN諸国への影響も及ぼします。全体として、両国間の「悪循環」(世論悪化→外交硬直)が懸念され、G20やAPECなどの多国間場で緩和努力が必要となります。

今後の予想

  • 短期(数日~1週間): 中国側が薛総領事の投稿削除や謝罪に応じる可能性は低く、さらなる非難声明が出るでしょう。日本は追加抗議(例: 外相レベルでの対応)を検討しつつ、国内世論を意識した「強硬アピール」を続ける見込み。呉大使の召致がエスカレートし、薛総領事の召還やペルソナ・ノン・グラータ宣言の議論が高まる可能性(X上で既に声あり)。中国国防省の軍事演習(台湾周辺)が増加し、緊張が軍事的に表面化するリスク。
  • 中期(1ヶ月以内): 高市政権の「高市外交」が試される局面。米中首脳会談のフォローアップとして、日米中3カ国協議を模索する一方、中国との経済対話(日中経済 partnership)を再開してバランスを取るでしょう。ただし、台湾総統選(2026年予定)に向け、中国の強硬姿勢が続き、日中首脳会談は先送り。経済影響として、日本企業の中国進出見直し(サプライチェーン多角化)が加速。
  • 長期(数ヶ月~): 台湾問題が日中関係の「新常態」化し、偶発事態防止のためのホットライン強化が焦点に。ポジティブシナリオ: 米国の仲介で緊張緩和。ネガティブシナリオ: 反日・反中世論の連鎖で貿易摩擦再燃(例: 2023年のような水産物禁輸)。日本は自衛隊の台湾海峡パトロール強化を進め、QUAD(日米豪印)枠組みを活用した抑止力を高める方向へ。全体として、日中関係は「管理可能な対立」にとどまるが、完全回復は難しく、2026年の地政学リスクが増大すると予想されます。
katchan17