ニュース概要
2025年10月30日（現地時間）、英国王室のバッキンガム宮殿は、チャールズ3世国王が弟のアンドリュー王子（65歳）から「王子」の称号をはじめとするすべての王室の肩書き、称号、勲位を剥奪する正式な手続きを開始したと発表しました。 0 これにより、アンドリュー氏は今後「アンドリュー・マウントバッテン・ウィンザー」と呼ばれることになります。これは、故エリザベス2世女王の次男として生まれた生まれながらの「王子」称号を失う異例の措置で、1919年の第1次世界大戦後のドイツ寄りの王族に対する措置以来、約100年ぶりのことです。 2
同時に、王室はアンドリュー氏がウィンザー城近くの王室公邸「ロイヤル・ロッジ」から退去するよう通告。20年以上無償で住んでいたこの邸宅を離れ、国王の私費で維持されるノーフォーク州サンドリンガム王室領内の私邸に移住する見込みです。 1 王室の声明では、「これらの処分は必要不可欠であり、彼が疑惑を否定し続けているにもかかわらず、被害者や生存者への同情を表明する」と強調されています。 5
背景と解説
この決定の引き金となったのは、アンドリュー氏と米国の性犯罪者ジェフリー・エプスタイン氏（2019年に自殺）の関係です。エプスタイン氏は未成年少女を性的搾取した罪で起訴されていましたが、アンドリュー氏は彼と長年にわたり親交を深め、2000年代に複数回会食や旅行を共にしたことが明らかになっています。 8 特に、被害者の一人バージニア・ロバーツ・ジュフリー氏（2025年4月に自殺、41歳）は、自身をエプスタインに「売られた」少女としてアンドリュー氏から3回の性的虐待を受けたとして、2022年に米ニューヨークで民事訴訟を起こしました。訴訟はアンドリュー氏が数百万ポンドの和解金を支払う形で決着しましたが、彼は不正を認めていません。 3
最近の再燃要因は、10月中旬に公開されたジュフリー氏の死後出版された回顧録と、2011年のメールの再浮上です。これにより、アンドリュー氏がエプスタイン氏との連絡を「2010年に断った」との過去の発言が虚偽だった疑いが強まりました。 11 これに対し、アンドリュー氏は今月半ばに「ヨーク公」などの爵位使用を自主返上しましたが、世論の批判は収まらず、チャールズ国王の公務中にも「エプスタイン隠蔽か？」との野次が飛びました。 12 X（旧Twitter）上でも、BBCの速報動画が数万回閲覧され、「王室の汚点」「遅すぎる措置」といった反応が相次いでいます。 32 47
この措置は、王室の「スリム化（少数精鋭化）」政策の一環でもあります。チャールズ国王は即位以来、非現役王族の公務制限を進め、アンドリュー氏の存在が王室全体のイメージを損なうとして、ついに本格的な「追放」を決断。元妻のサラ・ファーガソン氏（ヨーク公妃の称号も失効）もロイヤル・ロッジを離れ、娘のビアトリクス姫とユージェニー姫は称号を保持します。 7 法的には、国王の王室令状（Royal Warrant）で「王子」称号とHRH（殿下）を剥奪可能ですが、ヨーク公爵位の正式剥奪には議会法が必要で、国王は政府と協議済みです。 10
今後の予想
- アンドリュー氏の生活と財政: 称号喪失で公的資金が絶たれ、私費生活へ移行。王室はサンドリンガムへの移住を支援しますが、過去の和解金支払いや生活費で財政難が懸念されます。Xでは「王室の年金は止まるか？」との議論も。 45 彼の王位継承順位（現在8位）は変わらず、理論上は王族ですが、公務復帰は不可能でしょう。
- 王室への影響: チャールズ国王の支持率向上の可能性が高い一方、専門家は「遅すぎた措置で王室の信頼回復は不十分」と指摘。 42 ハリー王子夫妻の過去の離脱と比較され、「王室の隠蔽体質」批判が再燃する恐れ。Netflixの『ザ・クラウン』シーズン7で描かれる可能性も囁かれています。 35
- 法的・社会的波及: 英国警察の再捜査は低確率ですが、ジュフリー氏の回顧録を基にした米英の市民団体による訴訟が増えるかも。Xの反応から、#MeToo運動との連動で王室全体のジェンダー問題が焦点に。 40 短期的に王室イベント（例: クリスマス行事）でアンドリュー氏の不在が目立ち、長期的に王室の「現代化」を加速させるでしょう。
この事件は、王室の伝統と現代の倫理基準の衝突を象徴します。被害者支援の観点から、国王の決断は肯定的ですが、王室の透明性向上が今後の課題です。