2013年中国海軍によるレーダー照射事件の詳細

事件の概要(2件)

2013年1月~2月に、東シナ海(公海上)で中国海軍艦艇が海上自衛隊の艦艇・航空機に対して、射撃用火器管制レーダー(ロックオン状態)を照射した事件。防衛省が公式に公表したのは以下の2件です。

日時対象(日本側)中国側艦艇距離・状況
2013年1月19日 午後5時頃海上自衛隊護衛艦「ゆうだち」(DD-108)中国海軍ジャンカイⅡ級フリゲート約3kmまで異常接近後、火器管制レーダーを数分間照射
2013年1月30日 午前10時頃海上自衛隊艦載ヘリSH-60J(護衛艦「おおなみ」搭載)中国海軍ジャンウェイⅡ級フリゲートヘリが艦艇上空を飛行中、火器管制レーダーを約数分間照射(ミサイル発射直前の状態)

技術的・軍事的意味

  • 照射されたレーダーは「射撃管制用(Fire Control Radar)」で、単なる捜索レーダーではなく、ミサイルや主砲を実際に撃つための最終照準レーダーです。
  • 「ロックオン」状態=「あと数十秒でミサイルが飛んでくる」状態に相当するため、国際軍事ルールでは「敵対行為」に極めて近いと判断されます。
  • 日本側は即座に回避行動をとり、被害は発生しませんでしたが、実戦なら撃墜・撃沈される可能性があった極めて危険な行為でした。

日本政府の対応と公表の経緯

  • 当初は外交ルートで中国側に抗議・再発防止要求(非公表)。
  • しかし中国側は「そんな事実は一切ない」と完全否定。
  • 2013年2月5日、防衛省が証拠映像(レーダー波形記録)を公開し、公式に事件を公表。
  • 当時の安倍晋三首相は国会で「極めて危険な行為」「一歩間違えれば武力衝突」と強い表現で非難。

中国側の反応

  • 公式には「照射はなかった」「日本側が捏造」と完全否定。
  • 一部中国メディアは「日本の艦艇が先に威嚇接近したため、自衛的措置だった」と逆主張。
  • その後、中国国防省は「通常の識別照射だった」とトーンダウンしたが、謝罪・事実認定は一切なし。

事件の背景

  • 2012年9月の尖閣諸島国有化以降、日中間の緊張が極度に高まっていた時期。
  • 中国海軍は東シナ海での活動を急激に拡大しており、「尖閣周辺での実効支配」を軍事的に示す意図があったと分析されています。
  • 同年12月には中国国家海洋局の飛行機が日本領空を侵犯(初の領空侵犯)しており、レーダー照射はその延長線上のエスカレーションでした。

その後の影響

  • 日本は「事態をエスカレートさせない」ため、以降の類似事案をほとんど公表しなくなった(2025年の空自F-15照射事件まで12年間、公表事例はゼロ)。
  • 日中防衛当局間の「海上連絡メカニズム」(ホットライン)が2014年に合意・2018年に運用開始された背景の一つ。
  • 中国側は以降も同様の行為を繰り返していると指摘されるが、証拠が公表されず「グレーゾーン」扱いされてきた。

2025年12月の空自F-15への照射事件は、実に12年ぶりに日本政府が「中国軍によるレーダー照射」を公式に公表した事例であり、2013年事件の再来として非常に注目されています。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください