「経鼻ハイフロー(HFNC)で100%酸素・30L/minを流した場合、患者がいつまで持つか?」という質問は、患者の病態によって答えがまったく違います。
以下に、臨床現場でよく見るパターン別に「だいたいどのくらいで限界が来るか」をまとめました(あくまで目安です)。
| 患者の状態(主な病態) | 100%・30L/minでどれくらい持つか(目安) | 解説・次の展開 |
|---|---|---|
| 軽症~中等症の低酸素血症(COVID肺炎初期など) | 数時間~数日でも十分維持可能 | SpO₂ 92-96%キープできることが多い |
| 重症肺炎・急性呼吸窮迫症候群(ARDS)軽度 | 数時間~24時間以内 | PaO₂/FiO₂ 150-200くらいなら何とか持つが、徐々に悪化しやすい |
| 中等症~重症ARDS(PaO₂/FiO₂ <150) | 数十分~2時間以内で限界 | SpO₂が90%を切ってどんどん下がるケース多数 |
| 急性心原性肺水腫 | 30分~1時間で劇的に改善するか、逆に悪化 | CPAP/BiPAPや挿管が必要になることが多い |
| 重症COVID肺炎+肥満+高齢 | 30分~1時間でSpO₂80%台に急落 | HFNC失敗率70-80%と言われている群 |
| 挿管回避目的の「最後の手段」としてHFNC | 平均で1~2時間以内に挿管判断になる | 文献的にもHFNC失敗→挿管までの中央値は約2時間 |
現場で「もう限界」と判断するサイン(これが出たらほぼ挿管)
- 呼吸数>35-40回/分が持続
- SpO₂が92%以下に下がり続ける(100%でも上がらない)
- 補助筋使用・陥没呼吸が強い
- 意識レベルの低下、興奮、傾眠
- pH<7.25+PaCO₂上昇(CO₂ナルコーシス)
結論(臨床的な実感値)
- 本当に重症(PaO₂/FiO₂ <100-120くらい)の患者に100%・30L/minを入れても、多くの場合1時間以内に挿管になるか、ならざるを得なくなります。
- 30L/minが限界の機種(旧型Airvo2などでは、60L/minまで出せる新型機(Optiflowなど)に変えるだけで劇的に持ち直す患者もいます(流量不足が原因の場合)。
つまり、
「ボンベは3時間半持つけど、患者は多くて1時間、場合によっては30分も持たない」
というのが重症例の現実です。
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重症患者にHFNC 30L/min・100%を始めたら、同時に挿管の準備を始めてください。それくらいの覚悟で臨んだ方が安全です。
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