医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(医療的ケア児支援法)の詳細

正式名称: 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(令和3年法律第81号)
成立・公布・施行: 2021年6月11日成立、6月18日公布、9月18日施行。
目的: 医療技術の進歩により医療的ケア児が増加・多様化する中、個々の児童の状況に応じた適切な支援を提供し、児童の健やかな成長を図るとともに家族の離職防止に資し、安心して子どもを生み育てられる社会を実現する。

定義

  • 医療的ケア児: 日常的に医療的ケアを必要とする児童(主に18歳未満)。
  • 医療的ケア: 人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引その他の医療行為(看護師による医行為を含むが、学校等での非医療職実施を考慮した用語)。

基本理念

支援は以下の原則に基づく:

  • 医療的ケア児が他の児童と共に教育を受けられるよう最大限配慮(インクルーシブ教育)。
  • 年齢、ケアの種類、生活実態に応じた個別支援。
  • 医療・保健・福祉・教育・労働等の関係機関及び民間団体の緊密連携による切れ目ない支援。
  • 18歳到達又は高等学校卒業後も、適切なサービス継続に配慮。
  • 医療的ケア児及び保護者の意思を最大限尊重。

主な内容と責務

この法律は理念法であり、具体的なサービスを直接規定せず、支援の枠組みを定める。

スポンサーリンク
  • 国及び地方公共団体の責務: 基本方針の策定、施策の総合的推進(努力義務から責務へ強化)。
  • 保育所・学校設置者の責務: 医療的ケア児の受け入れに向けた努力(保育・教育の拡充)。
  • 医療的ケア児支援センター: 都道府県が指定可能。相談支援、情報提供、助言、関係機関の連携調整を専門的に行う。
  • 施策の例:
  • 保育・教育の拡充(一般保育園・学校での受け入れ促進)。
  • レスパイトケア(家族休息支援)。
  • 就労支援(家族の離職防止)。
  • 成年期への移行支援。

成立背景

  • 医療技術(NICU等)の進歩で、重い障害児の生存率向上。一方、退院後の預け先不足、家族負担(特に母親の介護負担・孤立・経済的困難)が深刻化。全国の医療的ケア児数は約2万人(2021年推定)と増加。
  • 従来の支援は努力義務中心で地域格差大。NPO(フローレンス等)や当事者家族、超党派議員(永田町子ども未来会議)の提言活動が成立を後押し。フローレンスが中心の「全国医療的ケア児者支援協議会」が長年ロビイング。
  • 学校教育での医療的ケア実施課題(1990年代から)が発端。「医療的ケア」という言葉の誕生から30年目の節目に成立。

施行後の状況(2025年現在)

  • 施行から4年経過し、各都道府県で医療的ケア児支援センターが設置・運用中。予算配分(地方交付税)により、地域格差是正が進む。
  • 関連施策: 障害福祉サービス報酬改定(医療的ケア児対応の基本報酬新設)、一般保育園での受け入れ促進、研修プログラム拡充(フローレンス等NPOのノウハウ提供)。
  • 影響: 公立認可保育園での医療的ケア児受け入れが進み、家族の就労継続しやすくなる。ただし、支援者不足や詳細規則の整備が課題として残る。
  • フローレンスの役割: 法成立に大きく貢献(提言・署名活動)。現在も現場サービス(ヘレン、アニー、ナンシー)と研修で支援拡大。

この法律は、医療的ケア児を「社会全体で支える」転換点。詳細条文は厚生労働省・こども家庭庁サイトやe-Govで確認可能。最新の施行状況は自治体により異なるため、居住地の支援センター相談を推奨。

スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください