スウェーデン民主党(Sverigedemokraterna、SD)の歴史
スウェーデン民主党(通称:SD)は、スウェーデンの右翼ポピュリスト・国家主義政党で、現在は反移民・社会保守主義を強調する立場として知られています。欧州の極右ポピュリスト政党の代表例の一つで、フィン人党と類似した台頭経路を辿っています。以下に時系列で詳述します。
設立と初期(1988〜1990年代)
- 設立(1988年2月6日)
- ストックホルムで設立。創設者は白人至上主義団体「Bevara Sverige Svenskt(BSS、スウェーデンをスウェーデンらしく保て)」やネオナチ・ファシスト関連の活動家が多く、初期メンバーの多くが極右背景を持っていました。
- 初代党首はAnders Klarström(1989年就任)で、過去にナチ関連団体とのつながりがあった人物。
- 当初は明確な反移民・反多文化主義を掲げ、スキンヘッドや極右活動家が集まるイベントが多く、党はネオナチイメージが強かった。
- ロゴは英国国民戦線(極右)のトーチを模したものを使用(2006年まで)。
- 1990年代:小政党時代
- 1995年にMikael Janssonが党首就任し、穏健化の兆しが見え始めるが、支持率は1%未満で議会進出できず。
- 党は「スウェーデンをスウェーデン人のために」とのスローガンを掲げ、移民制限を強調。
Jimmie Åkesson時代:穏健化と台頭(2005年〜)
- Åkesson党首就任(2005年)
- 当時26歳のJimmie Åkessonが党首に就任(現在も継続)。彼は穏健党(中道右派)の青年部出身で、党のイメージ刷新を推進。
- 「ゼロ・トレランス・ポリシー」を導入し、極右・人種差別主義者を排除。党はナチズム・ファシズムを明確に否定し、社会保守主義・民主的ナショナリズムを強調。
- 移民政策は厳格化を維持しつつ、「スウェーデンに貢献する移民は歓迎、犯罪者や社会負担者は排除」と現実路線へシフト。
- 初の国会議席獲得(2010年選挙)
- 得票率5.7%、20議席獲得。第3党ブロックとして初の議会進出。
- 他の政党から「隔離政策(cordon sanitaire)」で協力拒否されるが、存在感を増す。
- さらなる躍進(2014〜2018年)
- 2014年選挙:得票率12.9%、49議席。
- 2015年の難民危機(スウェーデンが人口比で大量受け入れ)で支持急増。
- 2018年選挙:得票率17.5%、62議席。第3党維持も、右派ブロックの鍵に。
政権影響力の獲得(2022年〜現在)
- 2022年選挙の大躍進
- 得票率20.5%、73議席獲得。穏健党を抜き、第2党に(社会民主党に次ぐ)。
- 右派ブロック(穏健党・キリスト教民主党・自由党・SD)が過半数獲得。
- Tidö合意(Tidö Agreement)により、穏健党のUlf Kristerssonが首相就任。SDは閣外協力ながら、移民・犯罪政策に強い影響力行使(例: 移民制限強化、ギャング犯罪対策)。
- 2024年欧州議会選挙
- 得票率13.2%(前回15.3%から低下)。国政での支持がピークアウトの兆しも、国内では依然第2党規模。
イデオロギーと特徴の変遷
- 初期: 明確な極右・人種主義的要素(ネオナチルーツ)。
- 現在: 社会保守主義・ナショナリズム。反移民(特にイスラム系)、犯罪対策強化、福祉のスウェーデン人優先、伝統文化保護を強調。LGBT権利や中絶は容認方向へ穏健化。
- 支持基盤: 労働者層・地方住民、男性中心。移民増加・犯罪多発への不満を吸収。
- 国際的に: 欧州のポピュリスト右翼(フランス国民連合、イタリア同盟など)と類似。EU懐疑から現実支持へ転換。
現在の位置づけ(2025年12月時点)
- 議会第2党。与党ブロックの最大勢力として、移民政策厳格化(帰化要件強化、モスク規制議論など)を推進。
- 支持率は18%前後(2025年5月調査で社会民主党36%、穏健党・SD同率18%)。
- 党首Åkessonは2026年選挙で閣僚入り要求を示唆。スウェーデン政治の右傾化を象徴し、「スウェーデン例外主義(多文化主義・寛容の終焉)」の象徴として議論されています。
スウェーデン民主党は、極右起源から主流化に成功した典型例ですが、過去の影とスキャンダル(党員の極右発言など)が課題です。欧州全体のポピュリズム台頭の中で、フィン人党同様に連立政権の鍵を握る存在となっています。
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