北欧の移民政策概要(2025年現在)
北欧諸国(デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、アイスランド)は、伝統的に福祉国家として知られ、かつては比較的寛容な移民政策を取っていましたが、2015年の欧州難民危機以降、特に2020年代に入ってから制限的・選択的な方向へ大きくシフトしています。主な理由は、移民の増加による社会統合の課題、福祉負担の増大、犯罪や並行社会(parallel societies)の懸念、右派政党の台頭です。2025年現在、北欧全体で「高技能労働移民の促進」と「庇護・低技能移民の抑制」が共通トレンドとなっています。
各国比較(2025年の主な特徴)
- デンマーク(最も厳格なモデル):
- 庇護申請数は40年ぶりの低水準。臨時保護を原則とし、家族再会を厳しく制限。
- 「ゼロ庇護」目標を掲げ、外部処理(第三国での審査)や「ゲットー」政策(移民集中地区の解体)で知られる。
- 福祉給付の削減、帰国促進を重視。左派政権下でも厳格政策を継続し、他国(英国など)のモデルとなっている。
- 労働移民は歓迎だが、全体として抑制的。
- スウェーデン(かつて寛容だったが急変):
- 2022年以降の右派政権で大幅制限。2024-2025年に庇護関連居留許可が過去最低記録。
- 家族再会・市民権要件の厳格化、給与閾値導入、低技能労働許可の禁止。
- 高技能労働(EU Blue Card延長など)を促進しつつ、帰国・強制送還を強化。
- ギャング犯罪対策として移民政策を「失敗」と位置づけ、転換中。
- フィンランド(右派連立で急速に厳格化):
- フィン人党(極右)の影響で、難民枠半減、市民権要件強化(居住期間延長、言語・自立要件)。
- 2025年の新統合法で移民の責任を強調。学生移民の制限準備中。
- 労働ベースの移民は維持しつつ、庇護・家族移民を抑制。国境手続強化。
- ノルウェー(中間的、徐々に厳格):
- 家族移民の所得要件引き上げ(2025年2月から約40万NOK)。
- 帰国戦略(2025-2030)で強制送還強化。難民福祉削減。
- 高技能・季節労働を促進しつつ、全体の持続可能性を重視。
- アイスランド(最も穏やかだが変化中):
- 移民増加で初の包括的政策(2025-2038)を策定。多文化社会を目指すが、統合指標(雇用・言語)を監視。
- 庇護申請は少ないが、労働移民中心。北欧他国ほど厳格化は進んでいない。
全体のトレンドと背景
- 制限化の共通点:庇護の臨時化、帰国促進、家族再会・市民権のハードル向上、低技能移民抑制。
- 選択性の強調:高技能・労働力需要の移民を積極的に受け入れ(例: 技術者、研究者)。
- 北欧協力:帰国協力の強化、外部国境管理の共有。
- 課題:移民の雇用率・統合が低い国が多く(特に女性・難民)、貧困や差別問題が発生。ウクライナ難民の影響も大きい。
- 将来見通し:EUの新移民・庇護パクトの影響でさらに統一化。労働力不足(高齢化)で高技能移民は拡大傾向だが、世論の反発で全体制限は継続。
北欧は依然として生活水準が高く、平等主義ですが、移民政策は「北欧例外主義」から「欧州主流の厳格化」へ移行しています。特に庇護目的の移民は難しく、仕事や留学経由の高技能ルートが現実的です。詳細は各国の移民局サイト(例: デンマークNY i Danmark、スウェーデンMigrationsverket)で最新情報を確認してください。
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