スウェーデンでは、反アジア人差別(anti-Asian racism)は主に日常的な微妙な差別(hverdagsrasismeやmicroaggressions)の形で現れ、身体的暴力は比較的少ないものの、ステレオタイプや排除が根強いです。特にCOVID-19パンデミック期に急増し、社会的議論を呼びました。以下に主な事例と傾向をまとめます。

COVID-19関連の反アジア人差別増加(2020-2021頃)

  • パンデミックでアジア系住民に対するヘイトが急増。Human Rights Watchの報告では、バスで押しつけられ「中国からか?」と聞かれたり、地下鉄で口を覆われたり、列車の端に避けられたりする事例が複数報告されました。
  • メディア(SVTなど)でアジア人が攻撃されたニュースが相次ぎ、BRÅ(犯罪予防評議会)の2020年報告で初めてアジア人がヘイトクライムの標的として言及。
  • 芸術家Lisa Wool-Rim Sjöblomのイラストシリーズ「I am not a virus」では、トラムで降りるよう言われた15歳の少女などの事例が描かれ、国際的に注目。
  • Redditや個人証言では、学校や職場での「ching chong」などのスラー、COVID関連の疑念の視線が増加。

2018年の中国人観光客ホテル事件

  • ストックホルムのホテルで早期到着した中国人家族がロビー滞在を拒否され、警察に連れ出された事件。
  • 中国政府が「人種差別的」と強く非難、旅行警告を発令し、外交問題に発展。SVTの風刺番組がこれをネタにし、さらに中国側から「sinofobi(中国嫌悪)」と批判され、緊張が高まった。
  • この事件は、ステレオタイプを助長したとして議論を呼び、スウェーデンのイメージに影響。

日常的・構造的な差別事例

  • アジア系(特に東アジア系、韓国系養子、タイ系など)が「モデルマイノリティ」として過度に期待される一方、職場・住宅市場での排除や性的ステレオタイプ(女性のhypersexualization、男性のfeminization)が指摘。Tobias Hübinetteの書籍『Svenska asiater』(2024)で、数百の証言から「gulinghumor(黄色人種ジョーク)」や「tjing tjong」などの嘲笑が常態化していると分析。
  • 2022年、Asian-AmericanのKat Zhouがストックホルムでのmicroaggressions(例: 「Asian trash」との暴言、目嘲笑のジェスチャー)をTwitterで告発、viralになり、さらにracismの反応を呼んだ。
  • 学校でのいじめ(つり目ジェスチャーなど)、採用時の差別、公共空間での嘲笑がRedditや研究で頻出。

全体の傾向

  • スウェーデンではアジア系人口が増加(約24万人、2022年)する中、反アジア差別は「軽視されやすい」とHübinetteらが指摘。パンデミックで一時的に注目されたが、anti-Black racismなどに比べ議論が少ない。
  • 政治的にはSverigedemokraterna(SD)の反移民スタンスが全体のxenophobiaを助長するが、アジア系対象の具体的大事件は少ない。
  • 最近(2024年頃)の研究では、COVID後の減少傾向も見られるが、構造的差別は継続。

スウェーデンは多文化主義を掲げつつ、移民増加に伴う分断が存在します。情報はHuman Rights Watch、Tobias Hübinetteの研究、メディア(SVT、Aftonbladet)、Reddit証言などに基づきます。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください