膵臓癌(膵癌)のステージ分類は、主にTNM分類に基づいて決定されます。日本では、国際基準であるUICC/AJCC第8版(2017年以降)と、日本膵臓学会の膵癌取扱い規約(最新は第8版、2023年)が併用されており、両者の定義に一部違いがあります。特にT分類で差異が大きく、臨床では文脈に応じて使い分けられます(国際比較ではUICC/AJCCを優先)。

以下に、2026年現在で広く用いられているUICC/AJCC第8版の詳細を主に説明します。日本膵臓学会の規約第8版ではT分類が従来の浸潤度重視を維持している点が異なりますが、ステージングの全体像は類似しています。

TNM分類の定義(UICC/AJCC第8版)

  • T(原発腫瘍):腫瘍の大きさと局所進展度
  • Tis:上皮内癌(carcinoma in situ)
  • T1:腫瘍最大径 ≤ 2 cm(膵臓内に限局していなくてもサイズ基準)
    • T1a:≤ 0.5 cm(一部のサブ分類で使用)
    • T1b:> 0.5 cm かつ ≤ 1 cm
    • T1c:> 1 cm かつ ≤ 2 cm
  • T2:腫瘍最大径 > 2 cm かつ ≤ 4 cm
  • T3:腫瘍最大径 > 4 cm
  • T4:腫瘍が腹腔動脈(celiac axis)、上腸間膜動脈(superior mesenteric artery)、および/または総肝動脈(common hepatic artery)に浸潤(切除不能を示唆)
  • N(領域リンパ節転移)
  • N0:領域リンパ節転移なし
  • N1:1〜3個の領域リンパ節転移
  • N2:4個以上の領域リンパ節転移
  • M(遠隔転移)
  • M0:遠隔転移なし
  • M1:遠隔転移あり(肝臓、肺、腹膜、遠隔リンパ節など)

ステージ(病期)分類(UICC/AJCC第8版)

ステージTNM解説(予後・治療の目安)
Stage 0TisN0M0上皮内癌。極めて早期、予後良好。
Stage IAT1N0M0腫瘍 ≤ 2 cm、無リンパ節転移。切除可能で予後比較的良好(5年生存率50-70%程度)。
Stage IBT2N0M0腫瘍 > 2 cm かつ ≤ 4 cm、無リンパ節転移。
Stage IIAT3N0M0腫瘍 > 4 cm、無リンパ節転移。
Stage IIBT1-3N1M0リンパ節転移1-3個。局所進行の可能性。
Stage IIIT1-3N2M0リンパ節転移4個以上、または T4(いずれもN0-2)
Stage IVT1-4N0-2M1遠隔転移あり。全身性疾患、化学療法中心。
  • Stage III はT4(主要動脈浸潤)を含む場合が多く、切除可能性が低い(局所進行癌)。
  • 切除可能性分類(Resectability):ステージとは別に、NCCNや日本膵臓学会で「切除可能(Resectable)」「切除可能境界(Borderline resectable)」「切除不能局所進行(Unresectable locally advanced)」「遠隔転移(Metastatic)」に分け、治療戦略を決定。

日本膵臓学会 膵癌取扱い規約第8版(2023年)の主な特徴

  • T分類:サイズではなく浸潤度重視(従来通り)
  • Tis:上皮内癌
  • T1:膵臓内に限局
  • T2:膵臓外に浸潤(ただし主要動脈未到達)
  • T3:膵臓外に浸潤(ただし主要動脈未到達)
  • T4:腹腔動脈、上腸間膜動脈、総肝動脈に浸潤
  • N分類:領域リンパ節を腫瘍位置別に定義、転移個数でN1/N2に細分。
  • M分類:腹腔洗浄細胞診陽性(CY1)をM1(遠隔転移)に含む(新規)。
  • ステージング表はUICCと一部一致するが、Tの定義違いで同じ腫瘍が異なるステージになる場合あり(例:膵外浸潤の小腫瘍がUICCではT1-2だが規約ではT3)。

臨床的なポイント

  • 早期(Stage 0/I):症状少なく、偶然発見や高危険群サーベイランスで検出。手術で治癒可能。
  • 進行(Stage III/IV):診断時約80-90%がこれに該当。予後不良(全体5年生存率10%前後)。
  • 診断時は造影CT/MRI/EUSでT/N/Mを評価し、必要に応じてPETや腹腔鏡検査。
  • 最新ガイドライン(膵癌診療ガイドライン2025年版)では、腹腔細胞診陽性例の外科治療を推奨しない方向に変更。

ステージは治療選択(手術適応、化学療法、緩和ケアなど)に直結するため、専門医による総合評価が不可欠です。個別症例では画像所見や全身状態を考慮した判断が行われます。

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