多発性骨髄腫(Multiple Myeloma: MM)の治療法は、近年急速に進化しており、特に2025〜2026年現在では4剤併用療法(quadruplet regimen)が初回治療の標準となりつつあり、免疫療法(特に二重特異性抗体やCAR-T細胞療法)の選択肢が大幅に拡大しています。治療は患者の年齢、全身状態、移植適応の有無、高リスク遺伝子異常の有無、再発・難治性の程度によって大きく異なります。
以下に、2026年現在の主な治療戦略を段階別に詳述します(日本骨髄腫学会診療指針2024年更新版+2025-2026年の最新承認・ガイドラインに基づく)。
1. 無症候性(くすぶり型)多発性骨髄腫(SMM)に対する治療
- 従来は経過観察が主流でしたが、2025年にダラツムマブ(ダラザレックス)単剤が進行リスクの高いSMMに対して承認(AQUILA試験に基づく)。
- 高リスクSMM(進行リスクが高い場合)では早期介入により、MMへの進行リスクを75%低下させる結果が日本人サブグループでも確認されています。
- 現在は一部の高リスク例で積極的治療が選択肢に。
2. 新規診断(初回治療)多発性骨髄腫
初回治療の目標は「深い奏効(MRD陰性)を早期に達成し、長く維持する」ことです。2025-2026年の大きな変化は4剤併用療法の標準化です。
- 移植適応例(主に65歳未満、PS良好)
- 標準:DVRd療法(ダラツムマブ + ボルテゾミブ + レナリドミド + デキサメタゾン)
- 2025年6月に移植適応・非適応問わず使用可能に改訂。
- 導入療法 → 自家造血幹細胞移植(ASCT) → 地固め療法(通常2-4サイクル) → 維持療法(レナリドミド±ダラツムマブなど)。
- 高リスク(del(17p)、t(4;14)など)例ではIsa-R-CyBorD(イサツキシマブ + レナリドミド + シクロホスファミド + ボルテゾミブ + デキサメタゾン)のようなより強力なレジメンも検討(ASH 2025報告)。
- 移植非適応例(高齢者や合併症あり)
- 標準:DVRd療法 または Isa-VRd療法(イサツキシマブ + ボルテゾミブ + レナリドミド + デキサメタゾン)
- 2025年2月にIsa-VRdが承認・適応拡大。
- ダラツムマブを含む4剤併用で、従来の3剤(VRd)より深い奏効とPFS延長が得られています。
- 支持療法(必須)
- 骨病変に対するビスホスホネート(ゾレドロン酸)またはデノスマブ。
- 腎障害例ではボルテゾミブベース+ダラツムマブが推奨。
3. 再発・難治性多発性骨髄腫(RRMM)
治療歴が増えるごとに選択肢が多様化。2025-2026年はBCMA標的とGPRC5D標的の免疫療法が急速に普及。
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- 1〜3再発(比較的早期再発)
- ダラツムマブ未使用の場合:ダラツムマブを含む3剤または4剤併用。
- ダラツムマブ使用後:カルフィルゾミブ + デキサメタゾン ± レナリドミド、イキサゾミブ + レナリドミド + デキサメタゾンなど。
- 新規オプション:テクベイリ(テクリスタマブ) + ダラツムマブ併用が第2再発以降でBreakthrough Therapy指定(2025年12月)。
- 3〜4再発以降(高度難治性)
- BCMA標的療法
- CAR-T細胞療法:アベクマ(イデカブタゲン ビクルユーセル)、カービクティ(シルタカブタゲン オートルユーセル)。
- 二重特異性抗体(BsAb):エルレフィオ(エルラナタマブ)、テクベイリ(テクリスタマブ)。
- ADC:ベランタマブ マホドチン(ブーレンレップ)。
- GPRC5D標的療法(BCMA療法失敗後も有効)
- タービー(トアルクエタマブ):2025年6月承認、3剤以上使用後のRRMMで奏効率70%以上(日本人データ77.8%)、完全奏効率33-47%。
- 切れ味が良く、1-2サイクルで効果発現。
- 髄外病変例でもテクベイリ+タービー併用で良好な成績(RedirecTT-1試験、NEJM 2025)。
- その他:ポマリドミド + デキサメタゾン ± ボルテゾミブ、XPO1阻害薬(セルビニエクス)など。
治療の全体像(2026年現在の原則)
- 初回治療で4剤併用(抗CD38抗体入り) → 深いMRD陰性を目指す。
- 再発時は標的の異なる免疫療法を順次使用(BCMA → GPRC5Dなど)。
- 維持療法の長期化とMRD評価の重要性が増している。
- 予後は劇的に改善:診断後5年生存率は50-70%超えの症例も多く、「長く付き合う疾患」へ移行中。
治療選択は専門医による個別判断が不可欠です。最新の臨床試験や遺伝子プロファイルに基づき、患者ごとに最適化されます。症状や合併症(骨痛、腎障害、感染症など)に対する支持療法も非常に重要です。
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