ニュース概要
2025年10月8日、労働組合の中央組織「連合」(日本労働組合総連合会)は、東京都内で開催中の定期大会で、芳野友子会長の3期目続投を正式に承認しました。これにより、芳野氏は2022年の初当選以来、引き続き連合のトップとして組織を率いることになります。連合の主な役割は、労働者の賃上げや権利擁護ですが、今回の続投決定は、連合が支援する野党2政党(立憲民主党と国民民主党)の動向をめぐる複雑な政治状況の中で注目を集めています。特に、国民民主党の与党(自民党・公明党)への接近姿勢に対し、芳野会長が強い懸念を示し、「クギを刺す」形で反対の意を明確に表した点がニュースの核心です。
この決定は、産経新聞や毎日新聞、テレビ朝日などのメディアで速報され、芳野会長の会見内容が広く報じられました。背景には、物価高騰下での賃上げ加速という連合の喫緊の課題がありつつ、支援政党の分裂リスクが組織の結束を脅かしかねない状況があります。
背景と詳細
連合の支援政党とそのジレンマ
連合は、立憲民主党(立民)と国民民主党(国民民主)の両方を主要な支援政党として位置づけています。これは、2018年の旧民進党分裂後の「二本立て」戦略によるもので、連合傘下の産業別労働組合(産別)が両党に候補者を送り込み、選挙での議席確保を図っています。
- 立民側: 連合の基盤である旧社会党系や公務員労組が強く、反自民の野党第一党として位置づけ。芳野会長は、立民との連携を「野党の対峙軸」として重視しています。
- 国民民主側: 旧民主党系の実務派が多く、連合の民間労組(例: UAゼンセン、JAMなど)が支援。政策面では現実路線で、税制改革やエネルギー政策で与党に近いスタンスを取ることがあります。
しかし、最近の政局で国民民主の玉木雄一郎代表が、自民党の高市早苗総裁(仮定の2025年政権)との連携を模索する動きを見せています。自民党内では、麻生太郎副総裁が国民民主の榛葉賀津也幹事長と面会を重ね、連立枠組みの拡大を画策。過去の岸田政権時にも国民民主幹部の入閣が噂された経緯があり、2025年の衆院選後、与党過半数割れの可能性を背景に、再び連立参加論が浮上しています。
芳野会長の「クギ刺し」発言
大会後の記者会見で、芳野会長は国民民主の連立入りについて「容認できない」と断言。具体的には以下の点を強調しました:
- 「連合が割れるようなことはあってはならない。立憲民主党と国民民主党が野党の立場で与党に対峙していくことが重要。」
- 玉木代表の「心配はない」という挨拶を「信じる」としつつ、連立は「スタンスが変わらない」と釘を刺す。
- 与野党の「熟議」を目指す連合の理念から、国民民主の与党接近は「緊張感ある政治体制」を損なうと批判。
これに対し、国民民主側は「明確に否定している」との立場を維持していますが、産別関係者は「国民民主が労組を切り離す気なら連立すればいい」と、連合離脱の可能性まで示唆。連合内では、立民支持の官公労系と国民民主支持の民間労組の間で亀裂が生じるリスクが高まっています。
分析と解説
政治的影響
この発言は、連合の「二本立て」戦略の限界を露呈しています。連合は2024年の衆院選で自公過半数割れに貢献した実績を誇りますが、支援政党の方向性乖離(立民の反自民 vs. 国民民主の現実路線)が、組織の求心力を弱めています。芳野会長の3期目は、2025年夏の参院選を控え、両党の候補者調整と政策一致を迫る「調整役」としての役割が重くのしかかります。失敗すれば、連合の選挙動員力が低下し、労働者票の散逸を招く可能性大です。
一方、自民党の高市総裁は、国民民主との連携で少数与党を強化する狙いがありますが、連合の反対は玉木代表の党内説得を難しくします。結果として、国民民主は「政策ごとの協力」に留まる中道路線を維持せざるを得ず、野党再編のきっかけになるかもしれません。ただし、連合分裂のシナリオ(例: 国民民主支持産別の独立)は、労働運動全体の弱体化を招く最悪の帰結です。
経済・労働面の文脈
連合の優先課題は、物価高(2025年現在、CPI上昇率3%超想定)への賃上げ加速。2024年の春闘で5%超の賃上げを実現したものの、来期は7%目標を掲げています。国民民主の与党接近が連立に発展すれば、労働法改正(例: 残業規制緩和)で不利になる恐れがあり、芳野会長の懸念はここに根ざします。逆に、野党連携が成功すれば、税制優遇や最低賃金引き上げの政策実現が期待されます。
芳野会長のリーダーシップ評価
芳野氏は女性初の連合会長として、ジェンダー平等や多様な労働者支援を推進してきましたが、今回の発言は「組織防衛優先」の現実主義を示しています。過去(2022年)には国民民主の予算賛成に理解を示した批判もありましたが、今回は一貫した「反連立」姿勢で信頼を回復する可能性。3期目は、連合の「脱旧来」改革(若手組合員の巻き込み)も課題です。
結論
芳野会長の3期目続投は、連合の安定を象徴しますが、国民民主の与党接近に対する「クギ」は、支援2政党のかじ取りの難しさを象徴する出来事です。政局の不透明感が高まる中、連合は野党連携の「接着剤」として機能せねばならず、失敗は労働運動の衰退を加速させるでしょう。参院選に向け、玉木・野田両代表との協議が鍵を握ります。連合の動向は、今後の日本政治の「熟議」度合いを占うバロメーターと言えます。