ニュースの解説

このニュースは、2025年10月11日付の朝日新聞などで報じられたもので、自民党(自由民主党)が、次期衆院選(おそらく2026年頃の実施を想定)において、公明党がこれまで候補者を擁立してきた小選挙区(いわゆる「公明選挙区」)に独自の候補者を立てる検討に入ったという内容です。併せて、日本維新の会(維新)への選挙連携(候補者調整や相互推薦など)を呼びかける動きも示唆されています。背景には、自民・公明の連立政権が2025年10月10日に正式に解消されたことが大きく影響しています。以下で、経緯と背景を詳しく解説します。

1. 経緯の概要

  • 自公連立の解消: 自民党と公明党は1999年以来、約26年間にわたり連立政権を維持してきました。これは、自民党の単独過半数確保が難しくなった1990年代後半の政治再編期に始まり、公明党の組織票(創価学会の支持基盤)が自民党の選挙勝利に欠かせない「選挙協力」の枠組みでした。しかし、2024年10月の衆院選で自公は過半数を割り込み「少数与党」化。2025年7月の参院選でも大敗し、衆参両院で過半数を下回る事態となりました。
  • 石破政権の崩壊と高市新総裁の誕生: 2025年9月、石破茂首相(自民党総裁)が退陣を表明。これを受け、同年10月4日の自民党総裁選で高市早苗氏(元経済安全保障相)が新総裁に選出されました。高市氏は保守強硬派として知られ、総裁選公約では経済安保強化や憲法改正推進を掲げましたが、公明党側は高市氏の「歴史認識問題」(例: 靖国神社参拝関連の過去発言)や「政治とカネ」(自民党の裏金問題の未解決)への姿勢に強い懸念を示しました。
  • 連立離脱の引き金: 10月10日、公明党の斉藤鉄夫代表が自民党との党首会談で連立離脱を正式表明。高市総裁との会談は「ぎこちない雰囲気」で終わり、公明側は「高市氏に投票できない」と明言。選挙協力の相互推薦も取りやめの方針を決めました。これにより、自公の「蜜月関係」は崩壊。自民党内では「公明の衰退に付き合えない」「連立のメリットが薄れた」との声が強まりました。
  • 独自候補擁立の検討: 公明党はこれまで、衆院選の小選挙区で約9選挙区(主に関東・近畿の都市部、例: 東京・大阪など)に候補者を擁立し、自民党はこれらの区で候補を立てず、組織票による「貸し借り」の選挙協力をしてきました。解消後、自民党はこれらの区に独自候補を立てる方向で調整を開始。朝日新聞によると、党執行部は「勢力拡大のため対決は避けられない」と判断し、11日に具体的な検討会を設置する見込みです。

2. 背景と自民党の戦略的判断

  • 選挙協力の重要性: 過去の試算(日本経済新聞、毎日新聞)では、公明党の協力がなければ、自民党の小選挙区当選者の20%前後(2024年衆院選ベースで25〜45人)が落選リスクにさらされます。特に、公明の強固な組織票(約100万票規模)が自民候補の当選を支えてきたため、解消は自民にとって痛手。一方、公明側も小選挙区4人の再選が危うく、維新の躍進(大阪・兵庫での公明選挙区への候補擁立可能性)でさらに苦戦が予想されます。
  • 維新への連携呼びかけ: 自民党は連立解消の穴埋めとして、政策的に近い維新(衆院35議席、参院19議席)を「本命」と位置づけています。高市総裁は総裁選公約で維新の「副首都構想」に理解を示しており、10月10日の党首会談で吉村洋文維新代表に連携を打診。維新側は「最低条件2点」(政策実現の具体化と選挙区調整の柔軟性)を挙げつつ、「健全な選択」と前向きですが、大阪府連などの反発や野党転落のリスクから慎重です。国民民主党(衆院27議席)も選択肢ですが、維新ほど政策一致度が高くないと見られています。
  • 政局の流動化: 連立解消直後、10月20日以降に予定される首相指名選挙で自民の高市総裁が選出されるかは不透明。野党側(立憲民主党、維新、国民民主、公明の合計で衆院234議席)は統一候補(例: 国民民主の玉木雄一郎代表一本化)を模索しており、維新・国民の動向が鍵。自民単独(衆院196議席)では過半数に届かず、少数与党化が避けられない状況です。

この動きの可能性と影響

1. 実現可能性

  • 独自候補擁立の可能性: 高(70-80%) 自民党内では高市総裁の強硬路線が主流で、公明離脱後の「雪崩式」勢力拡大を狙う声が強い。2024年衆院選の公明選挙区(約9区)で、自民は比例復活組を小選挙区に回す形で候補を準備可能。ただし、党内の調整(都道府県連の抵抗)が遅れれば、2026年衆院選直前にずれ込むリスクあり。過去の自公対立時(2023年の東京選挙区調整失敗)でも、自民は独自擁立を検討した前例があります。
  • 維新連携の可能性: 中(40-50%) 維新の吉村代表は「自民196+維新35で残り2議席で過半数」との試算を認めつつ、「政策本位で協議」と柔軟。最低条件(①憲法改正の歩調合わせ、②行政改革の具体化)をクリアできれば連立入りも視野。ただし、維新党内には「野党有利論」(立民との差別化)があり、選挙区重複(大阪・兵庫の10区以上)が最大のハードル。国民民主との「三角連携」も浮上していますが、維新単独より確率は低い。

2. 潜在的な影響

  • 自民党にとって: 短期的に議席減(20%落選リスク)で政権基盤が揺らぎ、予算案・法案成立が野党調整頼みに。長期では維新取り込みで保守勢力の「大連立」化が進み、高市政権の経済安保・防衛強化が加速する可能性。一方、失敗すれば「高市トレード」(政権交代)の引き金に。
  • 公明党にとって: 組織票の「貸し先」喪失で小選挙区全滅リスク。野党転落後、立民との接近(政策一致点: 社会保障強化)を模索するが、創価学会の反自民感情が強まれば支持離れを招く。
  • 維新にとって: 連立入閣で「与党化」し、行政改革を推進可能だが、支持基盤(無党派層)の反発を招く恐れ。吉村代表の「邪魔しない」スタンスから、部分連携(選挙協力のみ)で終わるシナリオも。
  • 全体の政局: 衆院解散・総選挙の早期化(2026年前倒し)が現実味を帯び、野党再編(立民・公明の「中道連合」?)を促す。株高や円安進行中の経済政策が停滞すれば、高市政権の支持率急落を招く可能性大。

このニュースは、日本政治の「自公一強」時代が終わり、多極化する転換点を示すものです。維新の出方次第で、2025年末〜2026年の政局が大きく変わるでしょう。最新の動向は党首会談の続報を注視してください。

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