メニエール病とは?

メニエール病(Ménière’s disease)は、内耳(耳の奥にある平衡感覚と聴覚を司る器官)に異常なリンパ液の貯留(内リンパ水腫)が生じることで発作的に起こる疾患です。1861年にフランスの医師プロスペール・メニエールが初めて報告したことから命名されました。

主に30~60歳代に発症しやすく、女性にやや多い傾向があります。日本では人口約3,000人に1人(約4万人)が罹患していると推定されています。


主な症状(3大症状

メニエール病の特徴は、発作性に以下の3症状が同時に出現することです:

症状内容
回転性めまいぐるぐる回るような強いめまい。数時間~1日程度続く。吐き気・嘔吐を伴うことが多い。
難聴(低音部障害型)片耳の低音域が特に聞こえにくい。発作を繰り返すと進行性の感音難聴に。
耳鳴りキーン、ゴー、ブーンなど。発作前や発作中に増強。

その他の随伴症状

  • 耳閉感(耳が詰まった感じ)
  • 音過敏(大きな音が不快)
  • 平衡障害(歩行困難)
  • 発作前の前兆(耳鳴り増強、耳閉感)

注意:発作と発作の間(間欠期)はほぼ無症状で、日常生活に支障がないことも特徴です。


診断基準(日本めまい平衡医学会・2017年改訂)

確実例(Definite)疑い例(Probable)
① 回転性めまい発作 2回以上(20分~12時間)
② 発作時に 低音障害型感音難聴(250・500・1000Hzで20dB以上)
③ 発作時に 耳鳴り・耳閉感
④ 他のめまい疾患を除外
① 回転性めまい発作 2回以上
② 難聴・耳鳴り・耳閉感のいずれか
③ 他の疾患を除外

検査項目

検査目的
純音聴力検査低音障害の確認(発作中が理想)
グリセロールテストグリセロール服用後、聴力改善 → 内リンパ水腫の証拠
電気コーチレオグラム(ECoG)内リンパ圧の上昇を検出
前庭機能検査(重心動揺計、カロリックテスト)平衡障害の評価
MRI聴神経腫瘍など他の疾患を除外

治療法

残念ながら完治は難しいですが、発作の抑制・難聴進行の防止が治療目標です。

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1. 生活指導(第一選択)

対策理由
ストレス回避ストレスが発作誘因
十分な睡眠睡眠不足で悪化
塩分制限(1日6~8g)水分貯留を抑える
カフェイン・アルコール制限血管拡張で悪化
禁煙血流悪化を防ぐ

2. 薬物療法

薬剤効果
イソソルビド(イソバイド)浸透圧利尿で内リンパ圧を下げる(発作予防)
ベタヒスチン(メリスロン)内耳血流改善・めまい抑制
利尿薬(フルセミドなど)水分排出
抗めまい薬(ジフェニドール)発作時のめまい・嘔吐抑制
ステロイド(プレドニン)急性期の炎症抑制(短期使用)

3. 外科的治療(難治例のみ)

手術適応
内リンパ囊開放術発作頻度が高く、薬でコントロール不能
前庭神経切断術めまいが強く、聴力温存可能な場合
鼓膜換気チューブ挿入耳閉感・めまい軽減

注意:聴力温存が最優先。破壊的手術(迷路摘出)は最終手段。


経過と予後

時期特徴
初期(発症~5年)発作頻度高く、めまいが主
中期(5~10年)発作減少も難聴進行
後期(10年以上)発作ほぼ消失(Burned-out)、高度難聴・耳鳴り残存
  • 70%は自然軽快傾向
  • 20~30%は難聴が進行し、補聴器が必要に

まとめ:メニエール病のポイント

項目内容
原因内リンパ水腫(詳細不明)
3大症状①回転性めまい ②低音難聴 ③耳鳴り
診断発作時の聴力検査+他の疾患除外
治療①生活改善 ②イソソルビドなど薬 ③難治例は手術
予後発作は減るが、難聴は進行しやすい
生活アドバイス塩分6~8g、ストレス管理、禁酒・禁煙

最終アドバイス
発作が起きたら安静・暗所で横になる。運転中・高所作業中は危険です。
早期受診(耳鼻咽喉科・めまい専門医)が重要です。
「めまい=メニエール」ではないので、類似疾患(前庭神経炎、聴神経腫瘍、脳卒中など)の除外が必須です。

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