ニュース解説

2025年11月28日、東京高等裁判所(東亜由美裁判長)は、同性同士の結婚を認めていない民法や戸籍法の規定が憲法に違反するかどうかを争った「東京第2次同性婚訴訟」の控訴審で、現行法を「合憲」と判断し、原告側の控訴を棄却しました。この訴訟は、東京都などに住む同性カップルや性的少数者8人が、国に1人あたり100万円の損害賠償を求めて提訴したものです。一審の東京地裁は2024年3月に「違憲状態」と認定していましたが、高裁はこれを覆しました。 9 10 16

判決の主なポイント

  • 憲法24条1項(婚姻の自由)の解釈: 判決は、憲法制定時の社会状況を踏まえ、「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」と定める同条項は異性間の婚姻を前提としていると指摘。同性カップルの婚姻は「憲法上保障されていない」とし、合憲としました。生まれる子の観点から「100%近くが夫婦間の子として出生・養育される」点を挙げ、民法の「夫婦」を男女と解釈するのが合理的だと説明しています。 9 3
  • 憲法14条(法の下の平等)の観点: 同性カップルが受ける不利益(例: 扶養義務や相続の制限)は、契約などで一部代替可能であり、約93%の自治体でパートナーシップ制度が導入されている点を考慮。国会に一定の裁量があるため、差別とは言えず合憲と結論づけました。ただし、「同性婚に関する国会審議が始まらない状況が続けば、幸福追求権(13条)や平等原則との関係で違憲は避けられない」と警鐘を鳴らしています。 12 18
  • 原告側の主張: 原告らは、性的少数者への社会理解の進展を挙げ、現行法が同性カップルの人格的利益や社会保障を侵害する不合理な差別だと訴えました。判決後、原告側からは「間違いではないか」「ショックが大きい」との憤りの声が上がり、支援者らも涙ぐむ姿が見られました。 10 6

この判決は、全国で2019年以降に提起された6件の同性婚訴訟(札幌、東京1・2次、名古屋、大阪、福岡地裁)で、高裁レベルでは初めての「合憲」判断です。これまで5件の高裁判決はすべて「違憲」または「違憲状態」でした。一審段階でも判断が分かれていましたが(違憲2件、違憲状態3件、合憲1件)、高裁でこれほど明確に割れたのは異例で、司法の慎重な姿勢を反映しています。 11 15

X(旧Twitter)上では、判決直後から「東京高裁の保守的な判断か?」「国会審議を促す意図か」との議論が活発で、原告支援の声や批判が相次いでいます。 1 8

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今後の影響

  • 最高裁への上告と統一判断: 原告側は即時上告する方針で、早ければ2026年中にも最高裁が大法廷で統一見解を示す可能性が高いです。最高裁の判断が「違憲」となれば、民法改正に向けた法的圧力が強まり、国会での法制化議論が加速するでしょう。一方、「合憲」なら現行法が維持され、同性カップルの権利保障がパートナーシップ制度などに限定される恐れがあります。判決自体が「国会審議の必要性」を強調しているため、司法は立法府へのボールを投げ返した形です。 12 16
  • 国会・社会への波及: 自民党を中心に同性婚法制化に慎重な議員が多い中、この判決は議論のきっかけになる一方、保守派の「合憲」擁護論を後押しする可能性があります。国際的には、G7諸国で日本だけが同性婚を認めていない状況が続き、人権問題として批判が高まる中、2025年の大阪・関西万博や外交面での影響も懸念されます。LGBTQ+コミュニティからは、最高裁への期待とともに「国会での早期審議」を求める声が強まっています。 6 4
  • 実務的な影響: 賠償請求は全6件で棄却されており、即時の金銭的救済はありません。ただし、パートナーシップ制度の拡大(現在約300自治体)が進む中、同性カップルの代替手段が増える可能性があります。一方で、相続・税制・医療同意などの不利益が残るため、個別の行政救済や民事的契約の重要性が高まるでしょう。

この判決は、同性婚実現に向けた司法の分岐点ですが、全体として社会の多様性尊重を促す流れは止まっていません。最高裁の動向を注視しつつ、国会での議論が活発化することを期待します。

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