サンフランシスコ講和条約(San Francisco Peace Treaty)の詳細

正式名称:日本国との平和条約(Treaty of Peace with Japan)
調印日:1951年9月8日(サンフランシスコ・オペラハウス)
発効日:1952年4月28日
参加国:49か国(調印48か国+インドネシア後日調印)
日本側全権:吉田茂首相
米国主導で作成(ジョン・フォスター・ダレスが実質的責任者)

主要な参加国(49か国)

  • 参加した主な国:米国、英国、フランス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、オランダ、フィリピン、ブラジル、アルゼンチンなど
  • 招待されず不参加:中華人民共和国(PRC)、ソビエト連邦、ポーランド、チェコスロバキア
  • 招待されたが不参加:インド、ビルマ(現ミャンマー)、ユーゴスラビア

条約の主要内容(特に重要な条項)

条項内容現在の影響
第2条(a)日本は朝鮮の独立を承認し、朝鮮に関するすべての権利・権原・請求権を放棄朝鮮半島の日本権利完全放棄
第2条(b)日本は台湾(福爾摩沙)及び澎湖諸島に関するすべての権利・権原・請求権を放棄台湾の法的地位を意図的に「未確定」にした(現在も最大の論争点)
第2条(c)日本は千島列島及び樺太南部に関するすべての権利・権原・請求権を放棄北方領土問題の法的根拠
第3条南樺太・千島列島、台湾・澎湖諸島の最終的処分は連合国が決定(実際には決定されず)台湾・北方領土の「未確定論」の根拠
第4条賠償問題は個別二国間協定で処理後に日韓基本条約(1965年)、日中共同声明(1972年)などで解決
第6条連合国軍の駐留を認める(後に日米安保条約に引き継がれる)在日米軍の法的根拠

台湾に関する条文(原文・和訳)

英語原文(Article 2(b))
“Japan renounces all right, title and claim to Formosa and the Pescadores.”

日本語訳(外務省公式)
「日本国は、台湾及び澎湖諸島に関するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。」

→ 注目点:誰に譲るか、どこに帰属するかは一切書かれていない(意図的曖昧)

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中国側の立場(現在も一貫)

主体立場
中華人民共和国(PRC)「条約は不法無効。中国(戦勝国)を排除した米国の陰謀。台湾は中国領土(カイロ宣言・ポツダム宣言で返還決定済み)」
中華民国(台湾)「当時の中華民国が代表として参加し、条約は有効。台湾の地位は未確定(status undetermined)」
米国(現在の公式見解)「条約は有効。日本は台湾の主権を放棄したが、誰に帰属するかは決定していない(One China Policyとは別)」

国際法上の評価(2025年現在)

見解主張する主体根拠
条約は完全に有効日本、米国、英国など49か国発効から73年経過、国際慣習法化
台湾に関する部分は無効中国共産党中国(PRC)を排除した手続き的欠陥
台湾の地位は「未確定」米国務省(非公式)、台湾政府条約は主権移転先を明記していない
カイロ・ポツダム宣言が優先中国、韓国の一部学者1943~45年の連合国宣言で台湾は中国に返還と明記

関連するその他の重要条約・宣言

文書台湾に関する記述
1943カイロ宣言台湾・澎湖諸島は中華民国に返還
1945ポツダム宣言カイロ宣言の条件を実行
1952日華平和条約(台北条約)日本と中華民国(台湾)が個別に平和条約締結
1972日中共同声明日本は「中華人民共和国を唯一の合法政府と認める」
1978日中平和友好条約反覇権条項(ソ連牽制)

結論:サンフランシスコ講和条約は現在も国際法上完全に有効な条約ですが、台湾の最終的帰属については意図的に曖昧に残されており、それが今日の日中・米中・日台間の最大の火種となっています。中国大使館が「不法無効」と主張するのは1951年以来70年以上一貫した立場で、今後も変わることはありません。

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