ニュース詳細
2025年12月2日、在日本中国大使館の公式X(旧Twitter)アカウント(@ChinaEmbTokyo)は、高市早苗首相が11月26日の党首討論で引用したサンフランシスコ講和条約(1951年9月8日調印)について、「不法かつ無効な文書」とする投稿を公開しました。この投稿では、条約が「一部の西側諸国によって、第2次世界大戦の主要戦勝国である中国やソ連を排除して結ばれた冷戦の産物」だと強く批判しています。背景として、高市首相は同討論で、台湾有事の文脈で「日本はサンフランシスコ講和条約により台湾に関するすべての権利・権限を放棄しており、台湾の法的地位を認定する立場にない」と発言。これに対し、中国側は条約の有効性を否定し、日本の発言が「台湾独立勢力の主張を助長するもの」と位置づけています。 0 1 3
この投稿は即座に拡散され、X上で数万の閲覧・リポストを記録。日本のネットユーザーからは「中国の歴史修正主義」「外交のエスカレート」との反応が相次ぎ、一部では「台湾が日本領になる可能性」を冗談めかして議論する声も上がっています。 2 6 中国大使館のこのような直接的なSNS発信は、近年「戦狼外交」の一環として頻発しており、2024年の尖閣諸島問題時にも類似の投稿が見られました。
分析
この事件は、日中間の歴史認識と領土・台湾問題の複雑な絡みを象徴しています。サンフランシスコ講和条約は、日本が連合国(主に米国主導)との間で結んだ平和条約で、日本は台湾・澎湖諸島の権利を放棄しましたが、当時の中国(中華人民共和国)は招待されず、中華民国(台湾)が代表として参加したものの、共産中国側はこれを「米帝国主義の陰謀」と一貫して無効主張してきました。 1 5 高市首相の発言は、こうした条約の文言を基に日本の中立的立場を強調するものですが、中国側はこれを「台湾の地位を曖昧化するプロパガンダ」と解釈し、反発を強めています。
背景と文脈:
- 高市政権の台湾政策: 高市首相は就任以来、台湾支援を強化(例: 2025年11月の「存立危機事態」答弁で台湾有事への自衛隊出動を匂わせ)。これは自民党内タカ派の影響ですが、日米同盟の観点からも米国寄りで、中国の「一つの中国」原則を刺激。 4
- 中国の外交戦略: 投稿はタイミング的に、12月上旬予定の日中外相会談を前にした「牽制球」。中国は経済制裁(レアアース輸出制限など)を避けつつ、SNSで世論戦を展開する戦術を好み、国内ナショナリズムを喚起する効果もあります。 5
- 国際的視点: 米国は条約を有効と認め、台湾関係法で台湾を支援。一方、欧州諸国は中立的ですが、中国の主張は国連総会決議(1971年のアルバニア決議で中華人民共和国を承認)で部分的に裏付けられるため、完全な「無効」主張は法的弱みも抱えています。
全体として、この対立は「歴史戦争」の延長線上で、短期的な外交摩擦ですが、台湾海峡の緊張が高まる中、日本の高市政権が「親台・反中」路線を加速させる要因となり得ます。X上の反応は日本国内で反中感情を煽る一方、中国国内では支持を集め、両国民の相互不信を深めています。
今後の影響
- 外交面: 12月10日頃予定の日中外相会談で議題化の可能性が高く、両国は「冷静な対応」を呼びかけていますが、尖閣諸島や台湾問題の進展を阻害。2026年の日中首脳会談(北京開催予定)で首脳レベル謝罪要求が出るリスクあり。中国側は追加のSNSキャンペーンを展開し、日本企業へのボイコット運動を誘発する恐れ。 3
- 国内政治: 日本では高市首相の支持率に微影響(タカ派層の支持向上も、経済界の懸念増)。野党(立憲民主党)は「外交失態」と批判し、党首討論で追及。維新の会は「中国の横暴」と同調し、与党内の結束を強める一方、地方選(2026年)で反中感情が票に繋がる可能性。
- 経済・国際関係: 日中貿易(2024年額約50兆円)の摩擦が再燃すれば、サプライチェーン混乱(半導体・自動車部品)。米国は日本支援を強化(QUAD枠組みで台湾防衛演習増)、ASEAN諸国は中立を保ちつつ、中国の経済圧力に警戒。長期的に、台湾有事の「抑止力」として日本が米軍基地提供を拡大するシナリオも。
- 不確定要素: X投稿の削除・修正の有無、または中国外務省の公式声明次第でエスカレート度が変わります。国際メディアの取り上げ次第で、G7での中国非難決議につながる可能性も低くないです。
このニュースは、日中関係の「氷河期」を象徴する出来事で、両国が歴史認識のギャップを埋めない限り、繰り返しの摩擦が予想されます。