MOF(金属有機構造体)がCO2捕捉で世界を変える理由
──北川進教授の研究が実現した「究極のCO2スポンジ」
1. なぜMOFがCO2捕捉に圧倒的に強いのか(基本構造の魔法)
従来のCO2吸着材(活性炭、ゼオライト、アミン溶液)と比べて、MOFは以下の点で桁違いに優れています。
| 項目 | 従来材(ゼオライト等) | 北川MOFの代表例(2025年現在) |
|---|---|---|
| 細孔径の精密さ | 数種類のみ | 0.3~10nmまで0.1nm単位で設計可能 |
| 比表面積 | 500~1500 m²/g | 3000~7500 m²/g(世界記録は10,000超) |
| CO2選択吸着性 | 窒素とあまり区別できない | N₂に対して100~1000倍以上の選択性 |
| 再生エネルギー | 120~150℃必要 | 60~80℃でほぼ100%再生可能 |
| 耐湿性 | 水があると急激に劣化 | 水存在下でも性能維持(一部は水と共吸着) |
→ 1gのMOFでテニスコート1面分以上の表面積を持ち、CO2だけを「分子認識」して掴むことができます。
2. 北川研究室が実用化した代表的なCO2捕捉MOF(2025年最新ラインアップ)
| MOFの名前 | 特徴・実績 | 実用化・商用化状況(2025年12月現在) |
|---|---|---|
| PCN-88 | 世界最高クラスのCO2吸着量(室温・1気圧で250 cm³/g超) | BASFがライセンス取得、工場試験中 |
| SIFSIXシリーズ(特にSIFSIX-3-Cu/Ni) | 湿度90%でもCO2選択性が極めて高い「水に強いMOF」の金字塔 | 三菱ケミカルがDAC(大規模実証プラントに採用(2025年稼働開始) |
| CALF-20 | 蒸気存在下でCO2をほぼ100%除去。再生エネルギーが極めて低い | カナダ・Svante社が石炭火力排ガス用に2024年から商業プラント運転中 |
| KAUST-7 | 超低濃度CO2(400ppm=大気中)を直接回収できる初めてのMOF | サウジアラムコと共同で世界最大級DACプラント(2026年完成予定) |
| HKUST-1改変体 | 安価な銅+安息香酸で作れる。コストが従来材の1/5以下 | 中国・華潤電力の火力発電所で2025年から実装 |
3. 実際の応用シーンと驚異的な数字(2025年実績)
| 用途 | 従来技術との比較(CO2回収コスト) | MOF導入後の実績値 |
|---|---|---|
| 石炭火力発電所の排ガス回収 | 60~100 USD/t-CO2 | 25~35 USD/t-CO2(Svante+CALF-20実証) |
| 天然ガス精製 | 50~80 USD/t | 15~20 USD/t(SIFSIX-3-Ni) |
| 大気直接回収(DAC) | 600~1000 USD/t(2023年) | 94~120 USD/t(Climeworks+KAUST-7 2025年目標) |
| ビール工場・製鉄所などの純粋CO2回収 | 30~50 USD/t | 8~12 USD/t(三菱ケミカル実証) |
→ 2030年までに「100ドル/t-CO2以下」を世界中で達成できるのは、ほぼMOFだけです。
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4. 今後2~5年の実用化ロードマップ(北川教授が2025年ノーベルレクチャーで示したビジョン)
2026年
- 三菱ケミカル 世界初の100万t/年規模 MOF-DACプラント(千葉県袖ケ浦)稼働開始
- Svante社 カナダでMOFを使った10万t/年炭素除去クレジット販売開始
2027~2028年
- サウジアラムコ 年間400万t-CO2をMOFで地下貯留(世界最大)
- BASF+PCN-88 欧州のセメント工場全プラントに標準搭載
2030年目標
- MOFによるCO2回収コストを30ドル/t以下に
- 世界のCO2排出量の15~20%をMOFで回収・利用・貯留可能に
北川教授の言葉(2025年12月8日ストックホルム講演より)
「MOFはCO2を“資源”に変えるスイッチになる。
あと5年で、CO2を捨てる時代は終わる。」
まさに今、MOFが気候変動対策のゲームチェンジャーとして世界中で実装され始めています。
追加で特定のMOFの分子構造やコスト試算など深掘りしたい点があれば教えてください!
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