性犯罪法改正の詳細(2023年施行を中心に)

日本では、性犯罪に関する刑法改正が2023年6月16日に成立し、同年6月23日に公布、7月13日から施行されました。この改正は、2017年の改正(性交同意年齢の引き上げなど)に続くもので、性被害の実態に即した処罰範囲の拡大を主眼としています。背景には、伊藤詩織さんの事件(2015年)や#MeToo運動の影響があり、被害者の同意の有無を重視する「同意ベース」の法体系への移行が図られました。改正法は刑法、児童買春・児童ポルノ禁止法、ストーカー行為等規制法などに及び、以下で主な内容を解説します。

1. 主な改正内容

改正の核心は、従来の「暴行・脅迫」要件を緩和し、被害者の「同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態」を処罰要件とする点です。これにより、処罰範囲が大幅に広がりました。以下に主要な変更点をまとめます。

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改正項目改正前改正後詳細・意義
罪名変更と要件緩和
(不同意性交等罪・不同意わいせつ罪)
強制性交等罪(暴行・脅迫、心神喪失・抗拒不能)
準強制性交等罪(心神喪失・抗拒不能のみ)
強制性交等罪と準強制性交等罪を統合し、「不同意性交等罪」に改称。
要件:同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態にし、乗じて性交等を行う。
8つの具体例(アルコール・薬物の影響、突然の襲撃、心理的圧力、上司・部下の地位利用など)を列挙。暴行・脅迫以外のケース(例: 酩酊状態での性行為)も処罰可能に。罰則は5年以上20年以下の懲役(無期懲役可)。わいせつ罪も同様に改正。
性交同意年齢の引き上げ13歳16歳16歳未満との性行為は、同意の有無にかかわらず原則処罰(ただし、18歳未満との行為は「淫行」として保護)。5歳以上の年齢差がある場合の例外を廃止。
公訴時効の延長性交等罪:10年
わいせつ罪:7年
性交等罪:15年
わいせつ罪:10年
被害申告の心理的障壁を考慮し、延長。改正法公布日(2023年6月23日)以降の犯罪に適用(遡及なし)。
新設罪:性的記録等送信罪
(撮影罪)
迷惑防止条例や軽犯罪法で対応(罰則軽微)わいせつ目的で撮影・記録・提供・送信・保管した者を処罰(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)。盗撮・リベンジポルノの厳罰化。性的画像の無断拡散を防ぎ、被害者の二次被害を軽減。
新設罪:面会強要等罪
(性的グルーミング罪)
該当なし16歳未満の児童に対し、脅迫・詐欺などで面会・同行を強要(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)。児童の性的搾取を未然に防ぐ。SNSでのグルーミング(信頼構築後の誘引)を対象。
その他の改正ストーカー規制法の罰則強化(ストーカー行為で性被害に至った場合の加重)。
性犯罪の司法面接(被害者支援のための専門聴取)導入。
被害者保護を強化。加害者の再犯防止のための性犯罪者処遇法改正も並行。

2. 改正の背景と社会的意義

  • 背景: 従来の法は「暴行・脅迫」の立証が難しく、被害者の多くが泣き寝入りするケースが多かった(法務省データ: 検挙率約10%)。伊藤詩織さんの民事勝訴(2019年)や国際的な#MeToo運動が後押し。法制審議会が2023年2月に要綱をまとめ、法務省が改正案を提出。
  • 意義: 「No means No」から「Yes means Yes」への移行を意識し、同意の積極的確認を促す。被害者中心の法体系へ転換し、性教育の推進も期待。施行後、起訴率は33.4%(法務省2023年データ)と上昇傾向だが、依然として有罪率の高さ(99%)が検察の慎重起訴を反映。
  • 課題と今後: 改正附則で5年後の見直し(性的同意の意識調査、公訴時効のさらなる延長検討)を規定。批判として「内心の同意判断が曖昧になる」指摘もあるが、全体として被害者支援団体から評価が高い。

3. 関連事例と影響

  • 伊藤詩織さんの事件(2015年)では、刑事不起訴だったが、改正後なら「薬物影響」や「地位利用」の要件で処罰しやすくなる可能性。
  • 施行後事例: 2023年以降、不同意性交等罪の適用が増加(例: 飲酒後の性被害)。X(旧Twitter)では「法改正で被害者が声を上げやすくなった」との声が多い一方、「誤用リスク」の議論も。

詳細は法務省公式サイト(https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00200.html)で確認を推奨します。2025年現在、さらなる改正議論(同意年齢の完全撤廃など)が進行中です。

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