スウェーデンの移民政策の比較（2025年現在）

スウェーデンは、2015年の難民危機以降、特に2022年の右派政権発足（スウェーデン民主党の閣外協力）で移民政策を大幅に制限化しました。かつて「人道大国」として知られ、北欧で最も寛容だった政策が、デンマークに近づく形で「選択的・制限的」へシフト。主な目的は、庇護移民の抑制、高技能労働移民の促進、帰国奨励、統合強化です。以下で、北欧主要国（デンマーク、ノルウェー、フィンランド）と比較します。

スウェーデンの主な政策特徴（2025年）

• 庇護・難民：申請数が過去最低（2024年約9,634件、2025年も低水準）。第三国定住枠を900人に削減。トラックチェンジ（庇護却下後国内で就労許可申請）廃止（2025年4月）。帰国手当大幅増額（2026年から成人1人最大35万SEK≈560万円）。
• 労働移民：高技能促進（EU Blue Card要件緩和、2025年1月発効）。低技能抑制（給与閾値引き上げ、2025年6月予定で月収中央値100%要求）。
• 永住・市民権：要件厳格化（収入29,680SEK/月、言語・統合証明必須）。庇護ベース永住許可の取り消し検討中（2025年提案）。
• 帰国・強制送還：送還決定有効期間延長（5年）、再入国禁止強化。
• 統計：庇護関連居留許可が記録的低水準（2024年6,250件）。

北欧各国との比較表

項目	スウェーデン	デンマーク	ノルウェー	フィンランド
全体的方向性	かつて最も寛容 → 急激制限化（デンマークモデル追従）	最も厳格（長期継続）	中間的（徐々厳格化）	右派影響で急速厳格化
庇護申請数・受け入れ	過去最低（2024-2025低水準）	40年ぶり低水準、ゼロ庇護目標	所得要件強化、帰国促進	難民枠半減
家族再会・市民権	扶養要件強化、言語・収入必須	厳格制限（24歳未満禁止など）	所得要件引き上げ	居住期間延長、言語要件強化
労働移民	高技能促進、低技能抑制	高技能歓迎、低技能抑制的	高技能・季節労働促進	労働ベース維持、学生制限準備
統合・並行社会対策	帰国奨励強化、平行社会調査	ゲットー政策（住宅分散、強制転居）	帰国戦略強化	統合指標監視
帰国促進	手当大幅増（最大560万円、2026年）	手当あり、外部処理推進	強制送還強化	抑制中心
背景・影響	犯罪増加・統合失敗でパラダイムシフト	長期ナショナリズム、EU法審査中	高齢化対応の選択性	極右政党影響

分析・考察

• スウェーデンの変化の大きさ：2015年以前は北欧で最も寛容（庇護申請16万超）。2025年現在、デンマーク並みに厳格化。ギャング犯罪（移民系若者中心）の増加が転機で、右派政権が「持続可能な移民政策」を掲げ、低技能・庇護を抑制。高技能（研究者・専門職）は積極歓迎し、経済貢献を優先。
• デンマークとの類似：デンマークは2000年代から厳格（ゲットー解消、臨時保護原則）。スウェーデンがこれをモデルに追従し、北欧で「制限化トレンド」が統一化。
• ノルウェー・フィンランド：ノルウェーはバランス型（福祉維持しつつ制限）。フィンランドはフィン人党影響でスウェーデン同様急変だが、まだ中間的。
• 共通トレンド：高齢化・労働力不足で高技能移民促進。一方、世論の反発で庇護・低技能抑制。EU移民パクト影響も受け、外部国境管理強化。
• 課題：制限化で統合改善狙うが、既存移民の疎外や人権批判（UNなど）あり。スウェーデンは「多文化から貢献重視」へ転換中。

スウェーデンの政策は今後も変動可能性大。最新情報はMigrationsverket（スウェーデン移民庁）サイト確認を推奨します。