2021年Dior展覧会炎上事件の詳細
2021年11月に起きたこの事件は、フランスの高級ブランドChristian Dior(ディオール)が上海で開催した展覧会で展示された写真が原因で大炎上したものです。特に中国のSNS(Weibo)と国営メディアを中心に批判が広がり、国際的に報じられました。主な経緯と詳細は以下の通りです。
事件の発端
- 展覧会の内容: 「Art’n’Dior」または「Lady Dior As Seen By」と呼ばれる展覧会で、上海のWest Bund Art Centre(西岸芸術中心)で2021年11月12日から開催。Diorのアイコンバッグ「Lady Dior」をアーティストが再解釈するアートプロジェクトの一環。
- 問題の写真: 中国の著名なファッションフォトグラファーChen Man(陳漫)が撮影した作品。
- アジア系女性モデルが清朝風の伝統衣装を着てLady Diorバッグを持ち、そばかすのある暗めの肌、一重まぶたを強調したスモーキーなアイメイク、長い爪の装飾(清朝貴族の象徴)、陰気で不気味な表情で正面を睨むようなポーズ。
- このスタイルは、欧米のステレオタイプ的な「東アジア人像」(小さな目、暗い肌、神秘的だが不気味)を助長すると指摘されました。中国の美基準(白い肌、大きな目)と正反対の描写が特に問題視。
反応と炎上
- 中国での批判: Weiboで急速に拡散され、「中国女性を醜く描いている」「西洋の偏見に迎合」「アジア人を侮辱」「不気味で陰鬱」との声が殺到。
- 国営メディア(Global Times、China Women’s News、Beijing Dailyなど)が社説で非難。「アジア女性を汚す」「中国文化を歪曲」と攻撃。
- ハッシュタグがトレンド入りし、数百万回の閲覧。ボイコットの呼びかけも一部で発生。
- 背景: この写真はChen Manの過去作品(2012年のi-Dマガジンカバーシリーズ)と似ており、多様な美を表現した意図だった可能性がありますが、2021年の文脈では「西洋のステレオタイプを強化」と受け止められました。
- 国際的な反応: BBC、NBC News、Bloombergなどで「人種差別的」と報道。日本や韓国でも一部で注目されましたが、中国ほどの大規模炎上にはなりませんでした。
DiorとChen Manの対応
- Diorの対応: 問題の写真を展覧会から即時撤去。WeiboなどのSNSからも削除。
- 声明で「中国人の感情を尊重する」「フィードバックを受け入れ、修正する」「これは商業広告ではなくアート作品」と説明。明確な謝罪は避けましたが、敬意を示す内容。
- Chen Manの対応: 数日後、Weiboで謝罪声明。
- 「初期の作品が未熟で、考え不足だった」「悪い影響を与えたことを深く反省」「中国を愛し、中国の美を伝える責任がある」と述べ、過去作品全体への批判も受け入れ。
- 結果として、ボイコットは大規模化せず、事件は沈静化しましたが、Diorの中国市場イメージに影響を与えました。
背景と類似事例
- この事件は、グローバルブランドの文化感度不足を象徴。Diorは中国が重要な市場(LVMHグループの売上貢献大)であるため、敏感な反応を引き起こしました。
- Diorの過去・類似トラブル:
- 2019年: 中国地図に台湾を含めず批判。
- 2022年: 新作スカートが明朝の伝統衣装「馬面裙」に似ていると文化盗用疑惑。
- 2023年: メイクアップ広告で「つり目」ポーズが炎上(前回のDior広告事件)。
- 他のブランドでも似た事例(Dolce & Gabbanaの2018年中国侮辱広告など)が繰り返されており、アジア市場での人種・文化ステレオタイプ問題が浮き彫りになりました。
この2021年の事件は、2023年の「つり目ポーズ」広告炎上と異なり、直接的なジェスチャーではなく「美の描写」の問題でしたが、根底に東アジア人に対する西洋ステレオタイプの拒絶という共通点があります。Dior側は迅速に撤去・対応したため、長期的なダメージは抑えられたようです。
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