持続可能な観光の国際事例(2025年現在)

持続可能な観光(Sustainable Tourism)は、国連世界観光機関(UNWTO)が定義するように、「訪問客、業界、環境、受け入れコミュニティのニーズを満たしつつ、経済・社会・環境への影響を考慮した観光」です。オーバーツーリズム対策として、観光税導入、訪問者制限、時間・空間分散、二重価格、コミュニティ参加などが世界的に採用されています。これらは、観光の経済効果を維持しつつ、環境保護と住民生活の共生を目指すものです。

主な国際事例

以下に、代表的な目的地の対策を挙げます。これらはUNWTOのガイドラインや現地政策に基づき、量から質へのシフトを促進しています。

  • ベネチア(イタリア):
  • 日帰り観光客向け入場料(€5〜€10、ピーク時変動)を2024年から本格導入・継続。事前予約制で混雑管理。
  • 大型クルーズ船の中心部寄港禁止。
  • 効果: 観光客の質向上と住民生活保護。収入はインフラ整備に充当。
  • ブータン:
  • 「高価値・低量(High Value, Low Volume)」政策。1日あたり持続可能開発費(Sustainable Development Fee)$200〜$250を課金。
  • 観光客数を厳しく制限し、環境・文化保護を優先。
  • 効果: 観光収入を国民福祉に還元。2023年訪問者約10万人に抑制し、過度な負担を回避。
  • マチュピチュ(ペルー):
  • 1日訪問者上限(約5,000人)、時間帯別チケット制、ガイド同伴義務。
  • インカトレイルも人数制限。
  • 効果: 遺跡の摩耗防止と文化保全。UNESCO遺産の持続可能性確保。
  • ドゥブロヴニク(クロアチア):
  • クルーズ船到着数制限(1日最大2隻など)。
  • 「Respect the City」キャンペーン: 街中での水着禁止、記念碑周辺の飲食制限。
  • 効果: 旧市街の混雑緩和と住民の生活質向上。
  • バルセロナ(スペイン):
  • 短期賃貸(Airbnbなど)規制・禁止強化、新規ホテル建設制限。
  • 観光税導入、クルーズ船規制。
  • 効果: 住宅価格高騰抑制と観光分散促進。
  • アムステルダム(オランダ):
  • 観光税高額化(宿泊費の7% + 定額€3)。
  • Airbnb制限、空港フライト数上限。
  • 「代替地区」プロモーションで観光客分散。
  • 効果: 中心部圧力軽減とオフシーズン誘導。
  • その他の注目事例:
  • アイスランド: 人気サイト入場料値上げ・制限、オフシーズン奨励。
  • バリ(インドネシア): 観光税増額、新規ホテル制限、代替地域誘客。
  • ブルージュ(ベルギー): 観光バス中心部進入禁止、ストリートパーティー制限。

分析・解説

これらの対策の共通点は:

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  • 経済的ツール: 観光税・入場料で財源確保(インフラ・環境整備)。
  • 数量管理: 上限設定・予約制でキャリングキャパシティ(受入能力)を守る。
  • 分散戦略: 時間(オフピーク奨励)、空間(代替地誘客)、質(高付加価値観光)へのシフト。
  • コミュニティ重視: 住民参加型計画で「観光嫌悪」を防ぐ。

UNWTOのベストプラクティスとして、データ監視(人流分析)、多主体連携(行政・住民・事業者)、教育キャンペーンが推奨されています。成功例では、観光収入が増えつつ環境負荷が減少し、住民満足度が向上しています。一方、課題は観光減少リスクや国際イメージ低下ですが、多くで訪問者満足度も維持・向上しています。

今後の展開

  • 2025年以降、UNWTOの「Measuring the Sustainability of Tourism」フレームワーク拡大で、データ駆動型管理が進む。
  • 気候変動対応(プラスチック削減、炭素排出規制)が強化。
  • 新興国でのエコツーリズム拡大、欧州での二重価格本格化。
  • グローバルトレンド: 「Under Tourism」(穴場目的地)促進で、持続可能性が観光選択の基準に。

これらの事例は、日本(富士山入山料、京都二重運賃検討など)の対策にも参考になります。詳細はUNWTO公式サイト(https://www.unwto.org/sustainable-development)で確認可能です。持続可能な観光は、観光の未来を形作る鍵です。

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