日本のオーバーツーリズム対策の詳細（2025年12月現在）

日本では、訪日外国人観光客の急増（2025年通年4000万人超え）により、オーバーツーリズムが深刻化。混雑、マナー違反、ごみ問題、住民生活への影響が主な課題です。特に京都、富士山、鎌倉、北海道美瑛町などで顕在化しています。

政府（観光庁）は2023年に「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」を策定。関係府省庁連携で持続可能な観光を推進。2024年度補正予算で158億円、2025年度補正予算で約68億円（総額225億円中）を対策に充てています。

主な政府・観光庁の対策

• 補助金事業: 「オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業」
• 地域関係者（住民含む）による協議会設置、計画策定、実施支援（補助上限8000万円）。
• 先駆モデル地域（26地域）、地域一体型・実証個別型で公募（2025年複数回実施）。
• 人流データ分析、混雑可視化、手ぶら観光、キャッシュレス、交通高度化（ライドシェア導入）など。
• 相談窓口: 観光庁専用窓口設置（自治体・DMO向け）。
• 日本版持続可能な観光ガイドライン（JSTS-D）: 国際基準準拠でマネジメント推進。
• その他: クマ出没多言語情報、医療保険加入促進、違法民泊抑制。

具体的な地域事例

• 富士山:
• 全ルートで入山料4000円（1人1回、従来2000円から倍額）。
• 山梨県側（吉田ルート）：1日上限4000人、事前予約制、夜間登山制限。
• 静岡県側（富士宮・須走・御殿場ルート）：事前登録・eラーニング必須、夜間入山は山小屋宿泊者のみ。
• 目的: 環境保全、弾丸登山防止、安全確保。
• 京都:
• 市バス・地下鉄で観光客向け高運賃（市民優先価格、二重価格）検討中。
• 混雑ライブカメラ・デジタルマップ配信、時間・エリア分散（周辺地域誘客）。
• 嵐山にスマートごみ箱導入（太陽光自動圧縮）。
• その他:
• 美瑛町（北海道）：私有地立ち入り防止でシラカバ並木一部伐採（住民生活優先）。
• 箱根：デジタルマップで混雑回避。
• 函館：AIカメラでリアルタイム混雑可視化。
• 姫路城：二重価格検討（観光客高め、2026年導入可能性）。

二重価格（デュアルプライシング）の議論

• 観光客・外国人向け高価格設定（または住民割引）。
• 目的: 財源確保、混雑抑制。
• 賛否: 賛（負担能力差、対策資金）、否（差別イメージ、納得性不足）。
• 海外参考: タージマハル（外国人20倍以上）など。

分析・解説

対策の方向性は量から質へのシフト。短期で混雑・マナー対応、中長期で地方分散・高付加価値観光推進。住民参加型協議が鍵で、「住んでよし、訪れてよし」の共生を目指します。

課題:

• 二重価格のイメージ低下懸念。
• 市場変動（円高、地政学リスク）。
• 効果測定と事例共有（2025年前半に全国展開予定）。

成功要因: データ活用（AI・人流分析）、多主体連携。

今後の展開

• 2026年以降: 訪日客成長鈍化予想も、2030年6000万人目標に向け対策強化。
• 予算拡大（交通・環境整備）。
• 全国100地域以上の持続可能観光推進。
• 二重価格の本格化可能性（ピーク時限定）。
• 大阪万博後（2025年）の遺症対策も含め、住民共生型政策加速。

詳細は観光庁サイト（https://www.mlit.go.jp/kankocho/）や特設サイト（https://overtourism-hojokin.go.jp/）で確認を。持続可能な観光が日本の観光立国の鍵です。