裁判費用をカンパ(寄付・クラウドファンディング)で募る問題点

日本では、裁判費用をカンパやクラウドファンディング(クラファン)で集める事例が増えています。特にSLAPP(戦略的訴訟による言論封殺)対策や公共性の高い訴訟で使われますが、法的・倫理的・実務的な問題点が指摘されています。以下に主なものをまとめます。

1. 弁護士倫理・独立性の問題

  • 弁護士は依頼者(当事者)の利益を最優先に守る義務がありますが、カンパに頼ると出資者(寄付者)の意向を無視できなくなるリスクが生じます。
  • 寄付者は「当事者を支援したい」だけでなく、「自分の支持する主張を裁判で勝たせ、社会に認めさせたい」動機が強い場合が多いです。
  • 裁判途中で当事者が和解や取り下げを選んだ場合、寄付者の期待に反し、弁護士が両者の間で板挟みになる可能性があります。
  • 弁護士側も、カンパ頼みだとモチベーション低下や無責任な対応のリスク(例: 期日不出頭)が指摘されています。

2. 訴訟の濫用・悪用リスク

  • カンパで多額集まると、自腹が痛まないため、嫌がらせ目的の訴訟(SLAPP)が容易になります。
  • 実際の判例(2024年東京地裁):名誉毀損訴訟で被告がカンパを募った行為を「同調者をあおるもの」と評価し、慰謝料増額の要素に考慮。
  • デマ拡散や攻撃を収益化(YouTube・グッズ販売と併用)するケースも問題視され、他人のお金で嫌がらせが可能になる点が批判されています。

3. 税務上の問題

  • 原則:個人受取の場合、贈与税(基礎控除110万円超で課税)や所得税の対象になる可能性。
  • 非課税になるケース:社会通念上相当(例: 病気治療支援、不当懲戒請求被害)と認められ、用途を厳格に裁判費用に限定した場合。
  • リスク:余剰金が発生したり、目的外使用すると課税対象に。事前説明(余剰金の扱い)を明確にしないとトラブル。

4. 透明性・管理の問題

  • 使途不明や報告不足で寄付者から不信を買う。
  • 裁判結果(敗訴・和解)で寄付者の期待が裏切られ、後々の紛争(返金要求など)が生じやすい。

払った側(寄付者)の返金・返還要求は可能か?

基本的に難しいです。法的根拠と実情を説明します。

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法的性質

  • カンパは無償の贈与契約(民法549条)と見なされるのが一般的。
  • 贈与は一旦完了すると、原則返還義務なし。寄付者は「裁判支援」という目的で自発的に渡しており、見返り(リターン)を期待しないのが前提。
  • クラウドファンディングの場合:
    • 寄付型:贈与と同じく返金ほぼ不可能。
    • 購入型・投資型:リターン未履行なら契約不履行で請求可能だが、裁判費用カンパは寄付型が多い。

返金が認められる例外ケース

  • 詐欺・目的外使用が証明された場合:募集時に虚偽(訴訟不存在など)や、集めた金を私的流用したら、不当利得返還請求(民法703条)や詐欺罪成立の可能性。
  • 事前約束がある場合:募集時に「敗訴時返金」「余剰金返還」と明記していれば、契約として請求可能(ただし稀)。
  • 実際の事例:クラファン詐欺(がん偽装など)で裁判になり返金命令が出た海外ケースはあるが、日本のカンパ裁判費用ではほとんど前例なし。返金認められた事例は極めて少ない。

実務的なアドバイス

  • 寄付前に:使途・余剰金の扱い・報告方法をしっかり確認。
  • 返金要求したい場合:内容証明郵便で請求 → 応じないなら少額訴訟など。ただし、勝算低く費用倒れのリスク大。
  • 多くの募集ページで「贈与として扱い、返金なし」と明記されているので、寄付は「戻らない前提」で。

裁判カンパは、マイノリティ支援や社会変革に有効ですが、上記リスクを理解した上で参加・募集を。公共訴訟専門プラットフォーム(例: CALL4)のように透明性高い仕組みを使うとトラブル減らせます。ご質問があればさらに詳しく!

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