訴訟の概要
池内恵教授(東京大学先端科学技術研究センター教授、イスラム政治思想専門の国際政治学者)は、飯山陽氏(通称: 飯山あかり、イスラム思想研究者で元日本保守党党員)を相手に名誉毀損を理由とした損害賠償請求訴訟を提起しました。この訴訟は、両者の学術的対立がSNSやYouTube上でエスカレートした結果生じたもので、言論の自由と名誉毀損の境界が争点となりました。事件番号は令和6年(ワ)第20088号(東京地方裁判所民事第43部)で、提訴は2024年7月26日頃に行われました。 26 請求額は1,100万円(プラス遅延損害金)で、対象となったのは飯山氏のYouTubeチャンネル「飯山あかりちゃんねる」上で2023年11月16日から2024年1月3日までに投稿された11本の動画です。 23 これらの動画では、池内教授の経歴(博士号の有無や教授資格)、公金受給(外務省補助金関連の不正疑惑)、言動(ハマス擁護やイスラエル批判)に対する攻撃的な発言が繰り返されていました。
背景と経緯
両者は東京大学大学院の同窓生で、イスラム研究の分野で接点がありましたが、2023年秋のハマス・イスラエル紛争を巡る意見対立がきっかけで対立が激化。池内教授が飯山氏をX(旧Twitter)上でブロックした後、飯山氏はYouTubeで反論を開始しました。 23 具体的な対立の始まりは2023年11月15日頃で、池内教授が飯山氏を「狂乱インフルエンサー」「虚言癖」「扇動者」などと批判的に言及したことに端を発します。これに対し、飯山氏は11月29日のライブ配信「【実名告発!】東大教授・池内恵氏の18の罪を暴くよ!」などで池内教授の言動を整理・指摘し、以降の動画でエスカレート。 24 飯山氏の代理人は眞鍋淳也弁護士ら(南青山M’s法律事務所)、池内教授側は河瀬季弁護士ら(モノリス法律事務所)が担当しました。
提訴後、飯山氏は2024年9月11日のYouTubeライブで訴訟の詳細を公表し、「私は人様の名誉毀損をするようなことはしていない」「弁護士から正当な言論とお墨付きをもらっている」と主張しながら、裁判費用としてカンパを募集。専用口座(三井住友信託銀行 新宿支店 普通 0172840 名義: 飯山陽)を公開し、多くの支持者から資金が集まったとみられます。 25 しかし、集まった総額や収支の詳細報告は行われておらず、判決後には返金要求や不透明さを指摘する声がX上で広がっています。 26 支持者からは「恫喝訴訟」として飯山氏を応援する動きがあり、例えばXユーザー@nihonjintamasiiは「言論活動を封殺する恫喝訴訟」と位置づけ、リツイートを呼びかけました。
判決内容と理由
判決は2025年12月18日、東京地裁で言い渡され、飯山氏に対し110万円の損害賠償支払いを命じました。 25 これは請求額1,100万円からの大幅減額ですが、名誉毀損の成立を認めた一部敗訴です。 26 判決文の全文は公開されていませんが、以下の理由が主に挙げられています:
- 人格攻撃の認定: 飯山氏の発言が学術的な批判を超え、「女性蔑視主義者」「ストーカー」「公金チューチュー」「DV彼氏みたい」「キモい」などの表現が人格攻撃と評価されました。これらは相手の信用を意図的に損なうもので、議論の本質を逸脱していると判断。 25
- 証拠のない断定: 「外務省とズブズブ」「不正に公金を得ている」などの疑惑を、十分な証拠なく断定的に発信した点が違法と認定。根拠のない噂の拡散は許されない。 25
- 執拗な繰り返し: 短期間に11本の動画を投稿し、攻撃を繰り返した悪質性が考慮。ネット拡散の影響力が高く、池内教授の学者としての信用に深刻なダメージを与えた。 25
賠償額110万円は、名誉毀損の一般相場(ネット拡散・悪質の場合100〜300万円程度)から見て妥当とされ、極めて悪質なケース(300万円以上)には該当しなかったものの、攻撃の回数や内容の悪質さを反映しています。 25 訴訟費用は飯山氏負担で、仮執行宣言も付与されました。一審判決のため、飯山氏側の上告可能性がありますが、現時点で公表されていません。
影響と反応
この判決は「言論の自由」が無制限ではないことを示す事例として注目されています。学問的反論ではなく、人格攻撃や事実確認不足の断定、執拗さが違法とされた点がポイントで、類似のネット言論紛争に影響を与える可能性が高いです。 25 飯山氏は判決について自身のYouTubeやXで一切触れていない一方、同時期の別訴訟(百田尚樹氏からの名誉毀損訴訟)での勝訴は即日報告しており、選択的な発信戦略が批判されています。 26 カンパの不透明さも問題視され、一部で「カンパ金返金の個人集団訴訟」が提起される動きがあります。 24 池内教授側は判決を「妥当」と評価し、飯山氏の主張(弁護士のお墨付きなど)が事実と矛盾する点を指摘する声もあります。 25 全体として、この訴訟はイスラム研究者の対立を超え、ネット時代の言論責任を問うものとなっています。最新の進展(上告など)は裁判所記録や当事者発信を確認してください。