日本における外科医(特に消化器外科を中心とした外科系)不足への対策は、厚生労働省を中心に2025年末に策定された「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」を基盤とし、2026年以降に本格的に施行・推進されています。外科医不足は診療科偏在の典型例で、長時間労働・激務・待遇の相対的悪さ・リスクの高さから若手離れが加速しており、対策は以下の3本柱で進められています。

1. 診療報酬による処遇改善・負担軽減の推進(2026年度診療報酬改定の目玉)

外科医の直接的な待遇改善(いわゆる「ドクターフィー」)を診療報酬で後押しする仕組みが新設・強化されています。これにより、外科医への特別手当支給や勤務環境整備が進みやすくなっています

  • 地域医療体制確保加算(特に加算2):消化器外科・心臓血管外科・小児外科・循環器内科などの高負荷診療科を対象に、特定診療科(最大3科)を指定。交代勤務制・チーム制の導入、外科医への特別な配慮(手当含む)、研修体制整備などを要件とし、加算を算定可能。加算2は加算1より厳格だが点数が高く、外科医の給与増の原資になる。
  • 外科医療確保特別加算(新設)長時間・高難度手術を実施する体制を整備し、外科医の勤務環境改善を図った病院で算定可能。高難度手術(例: 膵頭十二指腸切手術など)を病院機能とセットで評価し、外科医の負担軽減を前提に報酬を上乗せ。
  • これにより、「気合で使い続ける」病院ではなく、守られる体制を整えた病院が評価され、若手外科医の定着・流入を促す狙い。

2. 手術・急性期医療の集約化(高難度手術の集中とcommon diseaseの均てん化)

外科医1人当たりの負担を減らし、質を維持するための構造改革が強く推進されています。

  • 高難度手術(がん手術など)の集約化:人口20-30万人に1カ所の急性期拠点機能病院へ集中。手術件数の多さ=術後成績向上・外科医のスキル維持につながる(日本肝胆膵外科学会などのデータに基づく)。
  • 外科的common disease(虫垂炎・胆嚢炎・腸閉塞など)の均てん化:地域分散を維持し、アクセス確保。夜間救急対応の分散も含む。
  • 診療報酬で集約化を促進(上記の加算要件に集約化を組み込み)。日本外科学会・消化器外科学会も「集約化は必要条件」と強調し、NCD(全国臨床データベース)を活用した客観的データ提示で地域再編を後押し。

3. 医師偏在対策の総合パッケージ(地域・診療科偏在の同時是正)

外科医不足は診療科偏在+地域偏在の複合問題のため、以下のような仕組みが2026年4月からスタート。

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  • 重点医師偏在対策支援区域の指定・重点支援:医師が特に少ない地域(東北など)を優先。経済的インセンティブ(診療所継承・開設支援、派遣元病院支援、代替医師確保支援など)をセットで医師確保プランを作成。
  • 外来医師過多区域での新規開業規制:都市部などで新規クリニック開業時に、地域不足機能(夜間救急初期対応、在宅医療など)の提供を要請。従わない場合は医療機関名公表や一部診療報酬算定不可のペナルティ。
  • その他:医師少数区域等での勤務経験を管理者要件に拡大、税制優遇(地方開業時の登録免許税・不動産取得税軽減など)の検討、遠隔医療活用(D to D、D to P with Dなど)によるアクセス確保、リカレント教育・総合診療医育成の推進。

学会側の取り組みと今後の見通し

  • 日本消化器外科学会:チーム制・複数主治医制の推進、タスクシフト、業務効率化(ICT活用)を内部で進めつつ、国民への理解喚起(待遇改善の必要性)を強く訴求。「消化器外科医がいなくなる日?」キャンペーンなどを実施。
  • 日本外科学会:高難度手術集約化+common disease均てん化の両立を提言。外科医の魅力発信活動を強化。
  • 全体として、2040年に消化器外科医約5000人不足という危機的予測を背景に、診療報酬・医療法改正・集約化の三位一体で対応中。ただし、効果発現には数年~10年かかる見込みで、早期発見のための検診受診近隣医療機関情報の事前把握が患者側でも重要です。

これらの対策は「外科崩壊」を防ぐための本格的な構造改革ですが、根本的には外科の魅力向上(給与・労働環境・キャリアの見通し)が鍵。2026年以降の進捗が今後の外科医療の持続可能性を左右します。

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