参議院選挙での自民党の敗北と党内動向2025年7月20日の参議院選挙で、自民党・公明党の与党は改選議席50に届かず、非改選を含む参議院全体(定数248)で過半数(125議席)を割り込む大敗を喫した。これは1955年の自民党結党以来、衆参両院で少数与党となる初の事態である()。敗北の主な要因は以下の通り:
- 政治スキャンダルの影響:2024年の衆院選での「裏金問題」や非公認候補への2000万円支給問題が国民の不信を招き、参院選でも逆風となった(,)。特に選挙終盤でのスキャンダル露呈が議席減に拍車をかけた()。
- 物価高対策の不評:石破政権が掲げた現金給付策(1人2万~4万円)は「バラマキ」と批判され、野党の消費税減税訴求に比べ支持を得られなかった()。有権者の生活不安への対応不足が敗因と指摘されている()。
- 石破首相の不人気:選挙戦終盤、自民党候補陣営が石破首相の応援を断るケースが続出し、党内での求心力低下が明確に()。比例代表で落選した佐藤正久氏は「石破の顔を見たくないという支持者が増えた」と述べ、首相の不人気が敗北の一因と分析()
自民党内の動きと「石破降ろし」の動向参院選の大敗を受け、自民党内では石破茂首相の退陣を求める声が急速に高まっている。以下、党内動向と退陣圧力の分析:
- 党内からの責任追及:
- 旧茂木派の動き:旧茂木派の中堅・若手議員が、参院選敗北の責任を問うため、両院議員総会の早期開催を求める署名活動を開始。党則では国会議員の3分の1以上の要求で総会が招集可能で、執行部への圧力を強めている()。
- 青年局の反発:自民党青年局は7月23日に緊急オンライン会議を開催。地方組織や若手議員から「石破総裁と執行部の即時退陣」「体制刷新」を求める声が多数上がり、意見を文書化して執行部に提出予定()。中曽根青年局長は「自民党は終わりとの危機感」と強い表現で党の現状を批判。
- ベテラン議員の動き:佐藤勉元総務会長は森山裕幹事長と面会し、「国民の審判は野党になるべきとの声」と下野を主張。萩生田元政務調査会長や齋藤前経産相らと「下野論」を共有し、党再生のため石破退陣を求めた()。
- 地方組織の反発:栃木県連は石破総裁と森山幹事長の退任を求める文書を党本部に送付。県連幹事長は「党の存続にかかわる危機」と強調し、地方からの突き上げが強まっている()
総裁選前倒しの動き:
- 自民党党則では、党所属国会議員と各都道府県連代表の過半数の要求で総裁選を前倒し可能。佐藤正久氏は「総裁選で新たなリーダーを選び党を再生すべき」と主張し、党内での署名集めや県連の要望が高まれば総裁選実施の可能性がある()。Xでも「両院議員総会で総裁選前倒し」の声が上がっている()。
- ポスト石破の候補として、高市早苗前経済安全保障相、小泉進次郎農水相、小林鷹之元経安相らが名前が挙がるが、党内は「保守派のリーダー不在」との指摘もあり、明確な後継候補は見えない(,)。
石破首相の対応と続投の主張:
- 石破首相は7月21日の記者会見で「国政に停滞を招かない」として続投を表明。米国との関税交渉(7月23日に合意)、物価高、自然災害、安全保障を理由に「政治空白は許されない」と強調(,)。23日には麻生太郎最高顧問、菅義偉副総裁、岸田文雄前首相と会談し、続投意向を重ねて示したが、党内からは「責任逃れ」との批判が(,)。
- 2007年の参院選で安倍晋三首相の続投を批判した過去を問われ、「自民党が支持されない原因を分析し教訓を得たい」と釈明したが、党内での説得力は乏しい()。
- 8月中の参院選総括後、進退を最終判断する方針だが、関税交渉の決着で続投の大義が薄れたとの見方も()
- 退陣圧力の背景と党内力学:
- 歴史的先例:過去、参院選で過半数を失った自民党首相(安倍晋三、福田康夫、麻生太郎)は2カ月以内に辞任。石破氏の続投は「異例」とされ、党内では「スリーアウト」(衆院選、都議選、参院選の3連敗)として責任論が強まる(,)。
- 派閥再編と保守派の不満:2024年衆院選での旧安倍派切りが続き、党内左傾化への反発が参政党の躍進(14議席)につながったとの分析も()。高市早苗氏ら保守派は「自民党の背骨を入れ直す」と党再生を訴え、ポスト石破を視野に動く()。
- 麻生・菅・岸田の影響力:7月23日の3元首相との会談は、石破氏の進退を左右する重要な局面。麻生派の鈴木俊一総務会長は「変数が多すぎる」と政局の不透明さを指摘し、党内キーマンの動向が焦点()。
退陣を巡るシナリオと分析
- 退陣シナリオ:
- 8月中の退陣:7月23日、一部報道で石破首相が8月退陣の意向を固めたとされ、麻生・菅・岸田との会談で進退を協議(,)。党内総括後、両院議員総会で総裁選前倒しが決まれば、8月の臨時国会で首相指名選挙が実施される可能性()。しかし、自民が少数与党のため、新総裁が必ず首相に選出されるとは限らない()。
- 専門家の見方:法政大学の河野有理教授は、8月1日の米関税発動期限を「花道」に退陣が落としどころと指摘。一方、ジャパン・フォーサイトのトビアス・ハリス氏は、数日中に退陣論が党内で支持を集めれば「石破降ろし」が本格化し、政治危機に発展する可能性を指摘()。
- 続投シナリオ:
- 石破氏は「比較第1党」としての責任を強調し、野党との政策ごとの合意形成を目指す()。公明党の斉藤鉄夫代表は連立維持を確認したが、野党(立憲民主党、国民民主党、維新など)は消費税減税や政治資金問題で協力に否定的()。連立拡大も視野に入れるが、野党の拒否で政権運営は困難()。
- 党内では「ポスト石破」の有力候補不在が続投を後押しするが、求心力低下で法案や予算案の成立が難しく、政権は不安定化()。
- 政局の流動化:
- 野党では立憲民主党の野田佳彦代表が「大連立はありえない」と明言し、内閣不信任案提出の可能性を示唆()。国民民主党の玉木雄一郎代表も「約束を守らない石破政権に協力しない」と距離を置き、政策ごとの連携に限定()。参政党や国民民主党の躍進が新たな選択肢として注目されるが、野党連携は一枚岩ではない()。
- 自民党内では麻生派や旧安倍派など旧派閥の合従連衡が水面下で進み、総裁選を巡る動きが政局を左右する()。
結論
石破茂首相は参院選の大敗後、米国との関税交渉や物価高対策を理由に続投を主張したが、党内では「スリーアウト」の責任論が噴出し、旧茂木派、青年局、地方組織から退陣圧力が強まっている。8月中の総括と両院議員総会が焦点となり、総裁選前倒しや麻生・菅・岸田の動向が退陣の鍵を握る。保守派の不満や野党の非協力姿勢も重なり、政権運営は極めて不安定で、退陣が不可避との見方が支配的()。しかし、後継候補の不在や政局の不透明さから、短期的には続投が続く可能性もある。最終的な進退は8月の党内総括と野党との交渉次第で決まるだろう。