ガラスの天井の定義

「ガラスの天井」(glass ceiling)とは、組織内で資質や実績が十分にあるにもかかわらず、性別(主に女性)や人種、少数派の属性を理由に、昇進やキャリアアップが阻害される「見えない障壁」のことを指す比喩表現です。この「天井」がガラスであるのは、存在が透明で目に見えないため、努力の先に道筋が見えていても突破しにくいことを表しています。主に企業や政治などの階層社会で用いられ、女性の管理職登用や意思決定への参加を妨げる要因として議論されます。

ガラスの天井の歴史

この概念の起源は、1978年にアメリカの企業コンサルタント、マリリン・ローデン(Marilyn Loden)が女性のキャリアに関するパネルディスカッションで初めて使用したことに遡ります。当初は女性の昇進を阻む「見ざる障害」として提唱されました。

  • 1980年代後半: アメリカで広く流布し始め、女性の社会進出が進む中で注目を集めます。
  • 1991年: アメリカ連邦労働省が公的に用い、公民権法改正に伴い「ガラスの天井委員会(Glass Ceiling Commission)」を設置。女性やマイノリティの昇進障壁を調査し、1995年に「資格や実績があっても上層部から閉め出す目に見えない障壁」と定義した最終報告書を発表しました。これにより、国際労働機関(ILO)も指標として採用し、世界的に問題意識が広がります。
  • 1990年代以降: ジェンダー格差の可視化が進み、世界経済フォーラム(WEF)の「ジェンダーギャップ指数」や『エコノミスト』誌の「ガラスの天井指数」などの指標が生まれました。日本では、2017年のガラスの天井指数で29カ国中最下位(韓国と並ぶ)、2019年のジェンダーギャップ指数で153カ国中121位と、女性の昇進格差が深刻視されています。
  • 2010年代以降: 「壊れたはしご(broken rung)」という関連概念が登場(2019年、McKinsey報告書)。これは、最初の昇進段階から女性の機会が失われることを指し、ガラスの天井が上層部限定の問題でないことを示しています。

この歴史は、女性の労働参加率向上と並行し、SDGs目標5(ジェンダー平等)やESG投資の文脈で今も議論されています。

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高市早苗の位置付け

高市早苗氏は、日本の政治界における「ガラスの天井」を象徴的に破った存在として位置付けられます。2025年10月4日の自民党総裁選で、女性初の自民党総裁に選出され、臨時国会での首相指名選挙を経て、日本史上初の女性首相誕生の見通しです。これまで小池百合子東京都知事や野田聖子元総務相らが挑んだものの、党のトップポストに女性が就くのは初めてで、政界の「分厚いガラスの天井」を突破した象徴と評価されています。

  • 背景と意義: 高市氏は2024年の総裁選では惜敗しましたが、2025年の決選投票で小泉進次郎農林水産相を破りました。野田聖子氏は「党の大きなガラスの天井を割ってくれた」と歓迎し、立憲民主党の辻元清美氏もXで「ガラスの天井を一つ破りましたね」と祝福。識者(例: 三重大の岩本美砂子名誉教授)からは、「第一号の女性総裁誕生で、首相を目指す女性が増えやすくなる」との声が上がっています。米メディア(ワシントン・ポスト)も「ガラスの天井を打ち破った」と速報。
  • 課題と文脈: 一方で、少数与党の自民党を率いる重責や、ジェンダー政策での保守的スタンスから「ジェンダー平等が後退する懸念」も指摘されています。高市氏自身は「働いて、働いて、働いて…」と覚悟を語り、ヘビメタルバンド経験者としてのリーダーシップが注目されています。2024年の敗北時には「ガラスの天井か」とのSNS投稿が2,000件以上ありましたが、2025年の勝利は性別偏見を超えた実力勝負と見なされています。

高市氏の活躍は、日本女性の政治参加を後押しする一方で、組織内の構造改革(例: 女性管理職比率向上)が依然必要であることを示唆しています。

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