ニュース解説:日産自動車の本社ビル売却発表

2025年11月6日、日産自動車(7201)は横浜市西区の高島にあるグローバル本社ビル(土地・建物)の信託受益権を970億円で譲渡する契約を締結したと発表しました。譲渡先は東京都中央区に拠点を置くMJI合同会社で、12月12日付での売却完了予定です。この取引は「セール・アンド・リースバック(売却・賃貸戻し)」形式を採用し、日産は売却後も20年間の賃貸契約を結んで本社機能を継続利用します。売却益として2026年3月期に739億円の特別利益を計上する見込みで、経営再建の資金調達策として位置づけられています。以下で詳細を解説します。

取引の概要

  • 対象資産:横浜みなとみらい地区のグローバル本社ビル(地上33階、地下2階、高さ約150m、2008年竣工)。日産の創業地である横浜に2010年に移転したシンボル施設で、約2,000人が勤務。資産価値は不動産市況の好調を背景に高く評価され、970億円という高額譲渡を実現。
  • 譲渡先:MJI合同会社は台湾系大手自動車部品メーカー「敏実集団(Minth Group)」が出資する特別目的会社(SPC)とみられます。Minthは自動車内装部品で世界トップクラス、日産との取引実績もあり、戦略的投資の側面が強い。
  • 取引構造:まず信託を設定して受益権を分離・譲渡し、税務・会計上の効率化を図る。売却後、即座にリースバックで賃料を支払いながら使用継続。賃貸期間は20年で、更新オプション付き。
  • 財務影響:特別利益739億円は、簿価(取得原価から減価償却を引いた残存価値)との差額によるもの。日産の2026年3月期連結決算にプラス効果を発揮します。

この発表は、9月頃から報じられていた本社売却検討の正式決定版。初期の買い手候補として米投資ファンドKKRが浮上していましたが、最終的に台湾系企業にシフトした形です。

分析:経営再建の「苦肉の策」か、賢明な資産活用か

日産のこの動きは、深刻な業績悪化と構造改革の文脈で読み解けます。以下に主なポイントを整理。

  1. 資金調達の必要性
  • 日産は2025年上期で最終赤字約300億円を計上(前年同期は黒字)。グローバル販売台数は前年比5%減の約200万台で、特に中国市場のEV競争激化と米国での販売低迷が痛手。2028年3月期までに7工場の閉鎖と2万人(従業員の15%)の人員削減を計画中ですが、設備投資(EVシフト向け)や債務返済に多額のキャッシュが必要。970億円の調達は即効性が高く、手元資金を約10%押し上げる効果。
  • X(旧Twitter)では「本社売却で延命か?」「ルノー離脱後の孤立が招いた」との厳しい声が目立ち、短期的な「資産食いつぶし」批判も。実際、ルノーとの資本提携解消(2024年完了)後、日産の財務体質は脆弱化しています。
  1. セール・アンド・リースバックのメリット・デメリット
  • メリット:不動産の「眠れる資産」を現金化し、バランスシートを改善。賃貸料は経費化可能で、税務上有利。日産の場合、賃料負担は年間約50億円(推定)とみられ、売却益でカバー可能。
  • デメリット:長期的に賃料支払いが続くため、利益を圧迫するリスク。20年後には所有権喪失の可能性もあり、企業イメージの「本社移転」懸念も(ただし横浜継続で最小限)。
  • 不動産市況の好調(横浜のオフィス需要高)が970億円の高値実現を後押し。類似事例として、トヨタやホンダも過去にSPC活用の資産売却を実施しています。
  1. 市場反応
  • 発表直後、日産株は東京市場で一時2%上昇(終値4,200円前後)。特別利益の織り込みで短期買いが入りましたが、根本的な業績改善期待は薄く、出来高は低調。X投稿ではNHKニュース共有が相次ぎ、「日産の厳しさを象徴」「台湾企業に横浜のシンボルが渡るなんて」との感慨が広がっています。
項目詳細影響
売却額970億円特別利益739億円計上
賃貸期間20年年間賃料推定50億円、経費化
財務効果キャッシュフロー改善EV投資・債務返済に充当
リスク賃料負担長期化利益率低下の可能性

(出典:日産発表資料、関係者取材)

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今後の予想:再建加速も、構造課題の克服が鍵

  • 短期(1-3ヶ月):売却完了(12月)で資金流入が現実化。2026年3月期第3四半期決算(2月発表)で特別利益の効果が確認され、株価は4,500円台回復の可能性(確率60%)。ただ、米大統領選後のトランプ政権関税強化が輸出に打撃を与え、販売回復が遅れれば下振れリスク。Xでは「次は工場売却か?」との憶測も飛び交っています。
  • 中期(6-12ヶ月):ルノー・三菱とのアライアンス再構築や、ホンダとの提携深化が焦点。EVモデル「アリア」後継の投入で中国市場シェア3%回復を目指せば、営業利益黒字転換(前年比+20%)可能。ただし、為替(円安メリット剥落)や原材料高でコスト増圧力あり。推奨:保有継続、押し目買い。
  • 長期:本社売却は「一過性」ではなく、資産軽量化の象徴。2030年ビジョン「Nissan Ambition 2030」達成に向け、カーボンニュートラル投資を優先。成功シナリオでは時価総額2兆円回復も、失敗(販売台数150万台割れ)ならさらなるリストラ(追加売却)へ。全体として、資金面のテコ入れはポジティブですが、製品競争力強化が不可欠。投資家は12月の進捗を注視し、冷静な判断を。最新株価・業績は変動するので、リアルタイム確認をおすすめします。
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