参議院を廃止し一院制にするべきかどうか
希望の党が、10月22日の衆議院選挙の前に掲げた公約の政治の部分で
「衆院と参院の対等統合による一院制の導入で、議員定数と議員報酬、国会運営に関する費用を大幅に削減する」
と書かれていたことによって、一院制についての議論が一部で起こりました。結局希望の党はさほど議席を獲得できなかったこともあり、この議論は収束したにも見えますが、重要な政治的な課題の一つであることには変わりありません。
よく議論されていることは、対等統合といった表現ではなく、参議院の廃止、というテーマでとりあげられてきました。
そこで、参議院を廃止し一院制にするメリットとデメリット、さらにねじれ国会についてまとめました。
参議院廃止のデメリットについて
原則的には、これは現行の二院制のメリットとも言えますが、二つ目の院が再審議することによって、再考し、さらにもう一つの院のチェック機能を期待していると言えるでしょう。それが参議院の存在価値と言えます。
考えられる参議院のメリットを箇条書きにすると
1. 衆議院の衝動的な行動を参議院がチェックできる。
2. 衆議院だけでの拙速な審議を避け、慎重に法案を審議することが可能となる。
3. 1、2により、日本国民の多様な意見や利益の代表として国会が機能できる。
4. 立法機能を二院に分割することによって、一つの立法府の決定が絶対となることを抑止。
5. 参議院が国民の「良識の府」として機能できる。
衆議院は4年と任期が短く、解散制度もありますので、非常に短命です。そして、そのことも含めて、ひとりよがりな判断に傾きやすいという指摘もあります。そのような、衆議院に拙速な動きがないかどうかをコントロールする役割を参議院が期待されています。
そして、衆議院が実際頻繁に解散され、国会が断続的になるという欠点を補うため、任期が6年と長い参議院が存在するわけです。
国会で長期的な検討課題がある場合には、参議院の存在は重要性を増します。
一院制の場合、国政の総選挙の結果次第では国家の政治的な方針がいきなり変わってしまうことになり、政情が不安定に傾く可能性があります。
こういった観点によって、第二次世界大戦後の改革の中でも日本は2院制を残しました。
これらのメリットを廃棄することが、参議院廃止のでメリットです。
参議院廃止のメリットについて
その一方で、一院制に移行することによって、下記の二院制のデメリット、すなわち、日本においては参議院が存在することによるデメリットを解消できる可能性があります。
1. 人件費など諸経費が参議院分余計にかかる。
2. 衆議院と機能が重複している場合は、非効率である。
3. 再審議によって、迅速さが必要な政策でもその決定が遅れる場合がある。
4. 両院の意思統一に労力と日時を要する場合がある。
5. 参議院が衆議院の決定を強く拒否する場合に、立法上での行き詰まりとなる。
6. 一方、参議院の意見が常に軽視される状況では、二院制の有効性や政治的正統性が問われることになる。
上の4、5、の一番問題が発生しやすいのが、ねじれ国会と呼ばれる状況です。
ねじれ国会について
ねじれ国会とは、日本の国会において、衆議院で与党が過半数の議席を持っているにもかかわらず、参議院では過半数に達していない状態のことを指します。
この場合、国会運営が停滞しがちになります。そして、政府・内閣(与党からなります)が提案する議案が参議院で不成立となると、政府の政策実施が滞ってしまします。ただし、最終的には、衆議院の優越、という原則があり、完全に行き詰るところにまでは至りません。
衆議院の優勢に関しては、こちらのリンクでまとめています。
衆議院の参議院への優越とは?
参議院を廃止するメリットの一つとしては、これらの「ねじれ」もそもそもなくなり、迅速な国会運営が可能となります。
日本が一院制を導入することに関する考察
一院制にすれば、少なくとも議員が少数精鋭になり、また、歳費の削減にもなります。現在の参議院議員の中に、正直、日本の国会議員としての資質を問われても仕方がない議員も数人紛れています。
そして、決断が早い、時を捉えたダイナミックな政治となる可能性があります。
一方、参議院による衆議院への適度な抑制がなくなった国会のあり方に関する不安も残ります。そして、総選挙のときに参議院がないと、国会に誰もいなくなるといった不安もあります。そんなときに戦争や地震がおきたらどうなるでしょうか?
また、衆院と異なるタイミングで選ばれた別の議会があることによって、いっときの勢いに乗った勢力が政治を牛耳る、未熟な政治が行われる、という可能性を防ぐこともできるでしょう。
国際政治も短期的視野、そして長期的視野が必要です。当然、日本のあり方や政治に関してもそうであることは言うまでもありません。
憲法の改正など大きな課題が控えている日本において、参議院の存在はこれからも重要度を増してくるのではないか、というのが私の意見です
まとめ
希望の党が公約に掲げた一院制について、そのメリットとデメリットをまとめました。
例えば、憲法の改正など大きな課題が控えている日本において、参議院の存在はこれからも重要度を増してくるのではないか、というのが私の意見です。
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