天皇陛下の御退位が平成31年に行われると決定したという報道がありました。
憲政下の日本では前例のない生前退位、その日程が決定するに至るまでの過程がどのようになっていたのか、知らない方も多いと思われます。
そこで、まず今回は、平成28年7月の天皇陛下の生前退位に関するニュースに関して、そしてその後のご自身のお言葉で示されたご意向の内容と、有識者会議から特例法制定への流れについてまとめました。
天皇陛下の生前退位に関するニュースについて
平成28年の夏からの経緯は以下の通りです。
天皇陛下が生前退位をご希望されている、という情報が突然報道され、その真意などがはっきりしないため、情報が錯綜した状況になりました。
事の始めは、平成28年7月13日放送のNHKニュース7です。その冒頭で「天皇陛下が数年内に生前退位する意向を示していることが宮内庁関係者の取材で判明」と報じられました。
宮内庁は当初、報道は事実とは異なっている、と対応して、この件に関して否定的なコメントを発表しました。
これには、宮内庁は陛下のご意向が強いことはすでにわかっていたが、政治的な関与を指摘されないようにするためにも、最初に陛下の口から直接退位について言及されるのは問題があると認識していました。
そこでNHKにリークして、陛下が退位の意思をお持ちであることをまず報じさせて、陛下のご意向を広く世に知らしめる、という方法をとり、さらに当初宮内庁は否定することによって、陛下の政治関与がないよう手はずを整えた、という説がありますが、実際のところは不明です。
天皇陛下の生前退位に関するお言葉について
しかし、この状況において、天皇陛下は平成28年8月8日に「『天皇は国政に関する権能を有さない』との憲法上の制約により、具体的な現行の皇室制度についての言及は避ける」と前置きした上で、「生前退位の意向をにじませる内容」のお気持ちを表明されました。
陛下のお言葉の重要な点を要約すると以下の通りとなります。
「二度の外科手術を受け、加えて高齢による体力の低下を覚えるようになった頃から、これから先、従来のように重い務めを果たすことが困難になった場合、どのように身を処していくことが、国にとり、国民にとり、また、私のあとを歩む皇族にとり良いことであるかにつき、考えるようになりました。
「次第に進む身体の衰えを考慮する時、これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています。」
「天皇の高齢化に伴う対処が、国事行為や、その象徴としての行為を縮小していくことには、無理があろうと思われます。また、天皇の行為を代行する摂政を置く場合も、天皇が十分にその立場に求められる務めを果たせぬまま、生涯の終わりに至るまで天皇であり続けることに変わりはありません。」
「天皇が深刻な状態に立ち至った場合、これまでにも見られたように、社会が停滞し、国民の暮らしにも様々な影響が及ぶことが懸念されます。更にこれまでの皇室のしきたりとして、天皇の終焉に当たって、重い殯(もがり)の行事が連日二ヶ月にわたって続き、その後喪儀に関する行事が、一年間続きます。」
「その様々な行事と、新時代に関わる諸行事が同時に進行することから、行事に関わる人々、とりわけ残される家族は、非常に厳しい状況下に置かれざるを得ません。こうした事態を避けることは出来ないものだろうかとの思いが、胸に去来することもあります。」
このようなお言葉で、生前御退位の意向を示されました。
天皇陛下の退位に関する有識者会議について
この天皇ご本人のお言葉を受けて、内閣官房に天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議が設置され、有識者へのヒアリングなどの議論が行われました。
平成28年10月から14 回の会合を開き、退位後のお立場などに関して議論を重ねてきました。 そして平成29年4月21日にその最終報告が提出されました。
それを受けて政府は、天皇陛下の退位に関する特例法を国会に上程し、6月9日に法案が成立しました。。
過去には、江戸時代後期の119代光格天皇(1771~1840)に天皇の譲位があったので、それ以来、約200年ぶりの生前退位となります。もちろん、憲政史上では初めてとなります。
天皇陛下の退位に関する特例法について
平成29年6月には、天皇陛下の退位についての特例法が制定されました。
この法律は、
① 天皇陛下が、国事行為のほか、全国各地への御訪問、被災地のお見舞いをはじめとする象徴としての公的な御活動に精励してこられた中、83歳と御高齢になられ、今後これらの御活動を天皇として自ら続けられることが困難となることを深く案じておられること
② これに対し、国民は、御高齢に至るまでこれらの御活動に精励されている天皇陛下を深く敬愛し、この天皇陛下のお気持ちを理解し、これに共感していること
③ さらに、皇嗣である皇太子殿下は、57歳となられ、これまで国事行為の臨時代行等の御公務に長期にわたり精勤されておられること
という現下の状況に鑑み、皇室典範第4条の特例として、天皇陛下の退位及び皇嗣の即位を実現するとともに、天皇陛下の退位後の地位その他の退位に伴い必要となる事項を定めるものとする
1.天皇の退位及び皇嗣の即位
天皇は、この法律の施行の日限り、退位し、皇嗣が、直ちに即位するものとする
2.上皇及び上皇后
(1)上皇
① 退位した天皇は、上皇とするものとする
② 上皇の敬称は陛下とするとともに、上皇の身分に関する事項の登録、喪儀及び陵墓については、天皇の例によるものとする
この特例法をもとに、陛下の御退位に関するスケジュールが組まれていくことになりました。
まとめ
平成28年8月8日に天皇陛下から国民へのお言葉「象徴としてのお務めについて」を受け、有識者会議が開かれました。そして、平成29年6月には、天皇陛下の退位についての特例法が制定されました。
平成29年12月1日、皇室会議が開催され、皇室典範特例法の施行日について、平成31年4月30日とすべき旨の皇室会議の意見が決定されました。
その仔細については次回の記事でご説明します。
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